国連加盟60年、日本は安保理改革を主導せよ
日本が国連に加盟してから、きょうで60年を迎える。
国連創設から70年以上が経過し、加盟国は当初の51カ国から193カ国に拡大した。だが、世界平和実現のために大きな責任を負う安全保障理事会の構成や意思決定の方法などはほとんど変わっていない。日本は安保理改革を主導すべきだ。
いまだに残る「敵国条項」
日本は主権回復後の1952年6月、国連に加盟を申請したが、この時はソ連の反対で実現しなかった。加盟できたのは日ソ共同宣言発効後の56年12月18日で、日本は80番目の加盟国となった。
日本は戦後国際社会で「名誉ある地位」(故重光葵外相)を占めようと、開発や人道支援、紛争後の平和構築などに積極的に参加してきた。過去30年間、国連予算の分担率で米国に次ぐ2位を維持したこともあり、「確固たる貢献」(国連高官)は多くの国に評価されている。
それにもかかわらず、日本を第2次世界大戦の敵国と位置付ける「敵国条項」が国連憲章からいまだに削除されていないことには首を傾げる。この条項は、戦後措置に敵国が反した場合や、敵国の侵略政策の再現を阻むのに必要な場合、軍事行動を取れると定めたものだ。
95年の国連総会で「死文化している」と決議されたが、削除しなければ、沖縄県・尖閣諸島や歴史認識の問題で日本と対立する中国などが悪用する恐れも否定できない。国連の目指す国際社会の平和と安定が、この条項で損なわれる恐れもある。
すべての国連加盟国に条項削除に賛同するよう求める。日本はドイツなどの条項対象国と協力し、削除への取り組みを強めるべきだ。
国連が創設されて70年以上が経過した。現状では平和維持の主要な役割を安保理(15カ国)が担い、米英仏露中の5常任理事国に拒否権という絶大な特権が与えられている。しかし特に中露両国は、この特権を平和のためではなく、自国の利益のために用いることが多い。
今年9月に5回目の核実験を強行した北朝鮮への安保理制裁決議が、採択まで2カ月半かかったのは、拒否権を持ち、北の体制崩壊を懸念する中国を説得するためだった。シリア内戦をめぐっても、シリアで経済的・軍事的利権を持つロシアが拒否権を繰り返し発動し、効果的対応ができなかった。こうした機能不全は決して看過できない。
常任理事国入りを目指す日本、ドイツ、ブラジル、インドのグループ(G4)は昨年、安保理改革案を国連事務局に提出した。常任理事国を5カ国から11カ国に、非常任理事国を10カ国から14~15カ国にそれぞれ拡大することなどが柱だ。既得権益を手放そうとしない常任理事国が反対するだろうが、G4は地道に支持拡大の取り組みを進める必要がある。
世界平和に一層の貢献を
南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊は、安全保障関連法に基づく「駆け付け警護」の新任務実施が可能となった。まだ小さな一歩であるが、これを機に日本は世界平和のために一層の貢献をしていくべきだ。