山・鉾・屋台行事、地方活性化に生かしたい


 日本各地の山車や曳山行事が世界に認められた。国連教育科学文化機関(ユネスコ)は日本の「山・鉾・屋台行事」を無形文化遺産に登録することを決めた。古くからの伝統行事を世界に発信し、地方の活性化に生かしたい。

訪日客いざなう観光資源

 登録された無形遺産は、埼玉県秩父市の「秩父祭の屋台行事と神楽」や滋賀県長浜市の「長浜曳山祭の曳山行事」、福岡県福岡市の「博多祇園山笠行事」など全国18府県の祭り33件で構成されている。能楽や歌舞伎、和食、和紙などに続き、日本の無形文化遺産は計21件となった。

 山・鉾・屋台行事は、地域の安泰や厄よけを願って、木工や漆塗り、染め物や織物などの伝統工芸で華やかに飾り付けた山車などが街を巡るのが特徴。ユネスコの政府間委員会は33件の祭りが「伝承者や実践者である地域住民にアイデンティティーや芸術的創造性を与える」と評価した。

 安倍晋三首相は登録決定を受け、「心からうれしく思う。幾世代にもわたり地域で受け継いできた『山・鉾・屋台行事』を、誇りを持って後世へと継承し、国内外に発信していきたい」と語った。

 政府は観光大国を目指し、2020年の訪日外国人数を4000万人とする目標を掲げている。課題は、東京、名古屋、京都、大阪を結ぶ「ゴールデンルート」以外の地方に誘客することと言われている。33の行事はどれも地方色豊かで、その地方の工芸や芸能など文化の粋を集めている。地方への誘客に結び付ける大きな観光資源である。

  とはいえ、無形遺産に登録されただけで認知度が自動的に高まるわけではない。どのようにその魅力を海外に発信していくかが問題だ。インターネット上に動画を掲載し、充実させるなどの工夫も求められよう。

 外国人が実際に祭りを見に日本のその街を訪ねてみようと思うかどうかは、いかに旅心を誘う魅力的なツアーを企画するかにかかってくる。

 京都祇園祭などは国内でも有名で、夏の祭りシーズンには全国から多くの見物客が訪れるが、今回登録された中には国内での認知度がまだまだ低いものも少なくない。登録を機に、国内で広く知られるようになり、地方の活性化にもつながることを期待したい。

 33件は、いずれも国の重要無形民俗文化財に指定され、地域住民らが保護団体などをつくって保存、継承している。それは住民の団結と協力なしには不可能である。

 行事が継承されている地域では、祭りは人々の誇りであり、生活の中に深く根を下ろし、重要行事としてカレンダーに記されている。地域共同体のまとまりが弱くなっている今日、これらの行事は人々の地域への帰属意識を高め、交流の中心になっている。

世代超えた交流は貴重

  伝統行事という性格から、途切れることなく、世代間の継承がなされてきた。祭り行事は、少なくとも3世代が参加し一つになって運営されていく。世代を超えた交流という点でも、これらの行事は貴重である。