博多道路陥没、事故を繰り返した責任は重い
福岡市博多区のJR博多駅前で、市道が長さ約30㍍、幅約27㍍、深さ約15㍍にわたって陥没した。
早朝だったこともあり、歩行者や車が被害に遭うことはなかったが、日中であれば大惨事となりかねない事故だった。
地下鉄の延伸工事中に
陥没したのは、博多駅博多口から西に約200㍍の市道で、付近は多数のビルが建つオフィス街だ。現場周辺では陥没直後に最大約800戸が停電。福岡市は博多駅前の住民に避難勧告を出し、区内の公民館に避難所を開設するなど日常生活にも影響が出た。
現場では、市地下鉄七隈線の天神南-博多駅間(約1・4㌔)の延伸工事中だった。博多駅から西に向かって深さ約25㍍の地中でトンネルを掘り進めていたところ、上から水が漏れ出したため工事を中止。博多署に要請して付近を交通規制した約5分後に陥没したという。
福岡市営地下鉄の工事では過去にも2回、施工不良が原因で陥没事故が発生している。特に2014年10月に起きた2回目の事故現場は、今回の現場から約400㍍しか離れていない場所だった。
この時の工事では地上から掘り下げる「開削工法」が用いられた。しかし、掘る際に緩い地盤を固める作業などが不十分だったという。
国は福岡市交通局に警告書を出すなど、再発防止を強く求めていた。それにもかかわらず、事故を繰り返した福岡市の責任は重い。
延伸工事は13年12月に着工、20年度の開業を目指していた。今回事故が起きた部分は、大成建設など5社で構成する共同企業体が請け負っている。
現場は駅に近いため、広い空間を掘る際に適しているとされる「ナトム工法」で施工していたという。ナトム工法は内壁をコンクリートなどで補強しながら掘削するものだ。
岩盤が丈夫で水の少ない山岳部のトンネル工事などで使われることが多い。比較的安価に施工できる利点があるが、掘削機の先端が水を含んだ砂の層に当たった場合に崩落につながりやすいとされる。
今回は水と土砂が大量に流出して空洞ができ、地面の重さを支え切れずに陥没したとみられる。工事の際に地盤調査などが入念に行われたのか、国は徹底調査しなければならない。
一方、地下鉄工事ではシールドマシンで均一の大きさを掘削する「シールド工法」も用いられる。この工法は掘り進めるのと同時に周囲をブロックなどで固めるために地下水の影響を受けにくい。東京や名古屋、大阪などの地下鉄工事は主にシールド工法で施行された。
もっとも、道路の下には配管やケーブルなどが通っており、こうした地盤の脆弱(ぜいじゃく)さが今回の事故を大きくした面もある。これは福岡市に限らず、全国の都市部に共通する課題だろう。
地下インフラの点検を
老朽下水管による陥没も全国で問題となっている。下水道普及の早かった都市部ほど老朽化しており、事故も多いという。自治体や事業者は地下インフラの点検を欠かしてはならない。