「海の日」に思う、恩恵浴するだけの時代過ぎた
きょうは「海の日」。「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う」ために定められた国民の祝日である。近年、改めて日本が「海洋国家」であることを認識させられる出来事が相次いだ。「海洋日本」の未来を真剣に考えなければならない時である。
中国の強引な海洋進出
四方を海に囲まれた日本は、海から多くの恩恵を受けてきた。何より豊かな水産資源が、日本人の食生活を支え、まさに命の糧となってきた。
また海は、元寇の例を挙げるまでもなく、日本を外敵から守る自然の防壁の役割を果たしてきた。外国と陸続きの大陸国家のように、大規模な侵攻を幾たびも受けることはなかった。
さらに、海の向こうからはさまざまな文化が到来した。文化の伝播は必ずしも平和的ではなく、他民族の征服によってなされるケースも多い。しかし、日本の場合は文化だけが伝わるケースが多く、日本人はそれを選択的に受容することができた。
海は重要な通商路でもある。海上輸送は、陸上輸送と比べコストが遙かに低い。戦後、通商貿易立国となった日本にとって、安全な海上輸送は繁栄の大前提であった。
このように海から大きな恩恵を受けてきた日本だが、その海をめぐる環境は、近年大きく変化している。1994年、国連海洋法条約が発効し、海に関する国際的なルールが定められた。国際的ルールに従い、かつ主権を守るための戦略的な努力が求められるようになった。
ただ海の恩恵に浴する時代ではなくなってきているのだ。世界6位の広さの領海および排他的経済水域(EEZ)を保有するわが国は、その権益を守り、それを生かしていくための戦略をさらに練って、果敢に実行に移していかなければならない。
実際、中国の強引な海洋進出は日本を含む周辺国とさまざまな軋轢(あつれき)を生んでいる。フィリピンが提訴した仲裁裁判で、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は、中国が主張してきた南シナ海をほぼ囲い込む境界線「九段線」の権利を退けた。これに対し、中国政府は「中国の主権国家としての権利を侵すもので、不公正かつ不合法」と、受け入れ拒否の姿勢を示している。国際ルールを無視する国であることを世界に宣言したも同然である。
この判決では、南沙諸島の人工島が島でないと認定されたことにより、中国や韓国が「岩」だと主張している日本の沖ノ鳥島(東京都小笠原村)の扱いに、将来的に影響が出てくることも考えられる。日本としては、国際的なルールを尊重しながら、適切な対応が求められる。
海洋政策の推進のために、政府は安倍晋三首相を本部長とする総合海洋政策本部を設けている。海の安全、資源の調査・開発、水産、レジャーなど、担当省庁の横の連携を行っている。
海洋省新設も考えよ
2012年に認められたわが国の大陸棚拡張のためのデータ作製など、実際に行ったのは、海上保安庁であった。しかし、より戦略的な海洋政策を進めていくには、海洋に関わる部署を総合的に主管する海洋省の新設も考えなければならない。