露のドーピング問題、これ以上五輪を歪めるな
国際オリンピック委員会(IOC)は、ドーピング問題で揺れるロシアの全競技の選手について、国外の薬物検査で潔白が証明されることをリオデジャネイロ五輪参加の条件とした。
旧ソ連時代からの名残
世界反ドーピング機関(WADA)の独立委員会が、ロシアの陸上界でドーピング違反が横行していると認定したのは昨年11月のことだ。独立委の報告書は、2012年夏のロンドン五輪のメダリストら5選手の永久資格停止を求めたほか、ムトコ・スポーツ相ら政府の関与も示唆した。
ムトコ氏はロシアの反ドーピング機関(RUSADA)と検査機関に圧力をかけ、検体を操作してドーピングを隠蔽(いんぺい)するよう指示したという。さらに、検査機担当者が計1417点の検体を破壊したこと、そして治安機関の連邦保安局(FSB)の関与も明らかにするなど、ロシアが組織的に行ってきた深刻なドーピング汚染の実態を暴き出した。
しかしWADAによれば、その後も700件以上の検査逃れがあったほか、検査を実行できた中で陽性反応を示した検体が52件あった。国際陸連が資格停止中のロシア陸連について、必要な対策は不十分とし、現状で処分を解除せず、リオ五輪への参加を認めないと決めたのも無理はない。
これに対し、IOCは国際陸連の処分を支持しながらも、ロシアの全競技の選手に国外での薬物検査を義務付け、容認された場合にはロシア代表として出場できることを確認した。違反者が重量挙げなどの競技からも出ているため、検査対象を全競技の選手に広げる一方、クリーンな選手にリオ五輪への道を開いた形だ。
だが、ロシアのプーチン大統領の「ロシア政府が組織的ドーピングに関わったことは一度もない」との発言が国際社会に受け入れられたわけではない。このことをロシアは認識する必要がある。
ロシアでのドーピングは、旧ソ連時代からの名残だ。ソ連は社会主義の優位を西側に示すため、政府が選手の養成を徹底管理してドーピングも行っていた。しかし現在、国威発揚のためのドーピングが許されるはずもない。
ロシアでは、女子テニスのシャラポワ選手も、ドーピングで国際テニス連盟(TIF)から2年間の出場停止処分を科された。さらに冬季種目の選手たちの間にもドーピングが広がっていたとみられる。ロシアの検査機関の所長だったロドチェンコフ氏は先月、14年ソチ冬季五輪の際にもロシアが政府主導の組織的なドーピングを行っていたと米紙のインタビュー記事で告発した。
夏冬五輪でのドーピングは、世界のファンに対する背信行為だ。悪(あ)しき習慣を断ち切らなければ、五輪をはじめとする国際大会から締め出されかねない。ロシアは危機感を持つべきだ。
フェアプレーの精神で
五輪をこれ以上ドーピングで歪(ゆが)めてはならない。ロシアだけでなく、全ての参加国は五輪憲章でうたわれるフェアプレーの精神で臨む必要がある。