高速増殖炉、高い安全意識持つ新組織を
高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、新たな運営主体の在り方を議論してきた文部科学省の有識者検討会が、保守管理能力の向上などの要件を盛り込んだ報告書をまとめ、馳浩文科相に提出した。
点検漏れなど不祥事続く
エネルギー資源に乏しい日本にとって、原発の使用済み燃料を再利用する核燃料サイクルの確立は欠かせない。特に、高速増殖炉は投入した以上の燃料を生み出す「夢の原子炉」だ。もんじゅは研究段階の「原型炉」だが、核燃料サイクルの中核に位置付けられている。
ただ、もんじゅは1995年にナトリウム漏れ・火災事故で停止し、2010年5月の運転再開後も燃料交換装置の炉内落下事故を起こして再び停止。ここ数年は多数の点検漏れなど不祥事が続いた。
原子力規制委員会は昨年11月、現在の日本原子力研究開発機構に代わる新たな運営主体を決めるように文科省に勧告した。原子力機構が「もんじゅの運転を安全に行う主体として必要な資質を有していない」との判断に基づくものだ。
報告書は「研究開発成果の最大化を図る中で、保守管理が十分に重要視されてこなかった」と指摘。新運営主体が備えるべき要件として、もんじゅの特性を踏まえた保全計画の策定や、保守管理作業が高く評価される組織風土の定着などを挙げた。もんじゅを存続させていく上で、高い安全意識と保守管理強化が求められるのは当然だ。
文科省は夏ごろまでに新運営主体を選定し、規制委に報告する方針。原子力機構が引き続き運営を担う可能性について、馳文科相は否定的な考えを示している。
ただ特殊な冷却材ナトリウムの取り扱いなど、もんじゅに必要な技術は原子力機構にしか存在しない。新運営主体には、こうした技術を確実に継承し、高めていくための専門性が欠かせない。
もんじゅに関してはナトリウム漏れ事故後、ほとんど稼働していないにもかかわらず、既に1兆円を超える国費が投入されている。このため「廃炉にすべきだ」との声も上がっている。
一方、敦賀市の渕上隆信市長は「政府は立地地域が国策である核燃料サイクルの研究開発に誇りを持って協力してきたことを、改めて肝に銘じていただきたい」とのコメントを発表。福井県の西川一誠知事も「政府一丸となって、もんじゅを含む核燃料サイクル政策の将来に真剣に取り組むよう望みたい」と求めた。
もんじゅのような高速増殖原型炉は、国際的に見ても貴重な存在だ。14年4月に閣議決定した政府のエネルギー基本計画では、核廃棄物の有害度低減や核不拡散の技術向上のための国際研究拠点として位置付けられている。
政府は危機感を持て
もちろん、もんじゅの存在意義がどれほど大きいとしても、安全面での信頼を回復できなければ、廃炉を求める声は強まるばかりだろう。
政府は危機感を持って、新運営主体の選定に当たらなければならない。