日米韓防衛演習、最大の北ミサイル抑止だ


 日米韓3カ国は来月、北朝鮮の弾道ミサイル発射を想定したミサイル防衛(MD)関連の演習を米ハワイ沖で実施する。北朝鮮によるミサイル攻撃の脅威が増す中、3カ国が実質的な防衛訓練で連携することは、最大の抑止効果を生み出し極めて重要だ。

核攻撃は現実の脅威

 演習は海上自衛隊、米海軍、韓国海軍がそれぞれイージス艦を1隻ずつ出し、敵ミサイルの探知・追跡を合同で行うというもの。日米の参加呼び掛けに韓国が応じたもので、MDをめぐる3カ国演習としては初めてとなる。

 MDは高速で飛来してくるミサイルを無力化しなければならず、一刻を争う情報の収集・分析、迎撃の精度の高さが求められる。特に北朝鮮が西海岸からミサイルを日本や米国に向け発射した場合、まずは黄海と日本海、太平洋にそれぞれ配備されたイージス艦同士の情報共有が不可欠だ。3カ国がMD演習を行う意義は大きい。

 韓国はこれまで北東アジアで日米が構築するMD体制に反発してきた中国に配慮し、こうした演習への参加を見送ってきた。弾道ミサイル迎撃能力の格段のアップが見込まれる高高度防衛ミサイル「THAAD(=サード)」の在韓米軍配備にも、中国の露骨な反対のため当初は慎重な姿勢を崩さなかった。

 だが、結局は今年に入ってサード配備で米国と公式協議入りし、日米MD演習への参加も決めた。貿易を中心とする経済分野や将来の韓半島統一などで協力が欠かせない中国への配慮よりも安全保障上の国益を優先させた形だ。朴槿恵政権による「中国傾斜」路線が軌道修正された可能性をうかがわせる動きとしても注目したい。

 北朝鮮の核・ミサイル脅威は深刻なレベルまできている。すでに4回の核実験を実施し、それと連動させて事実上の長距離弾道ミサイル発射実験を繰り返している。昨年からは発射地点が察知されにくい潜水艦発射型ミサイル(SLBM)の試射もやり始めた。

 一部報道によれば、北朝鮮は核小型化に成功し、日本や韓国を射程に収める短・中距離弾道ミサイルへの搭載が可能と米韓当局が判断している。

 先日の第7回党大会では、朝鮮労働党委員長に「推戴」され統治への自信を内外にアピールした最高指導者の金正恩氏が、今後とも核開発を重視する姿勢を鮮明にした。

 こうした「金正恩統治」が存続する限り、日米韓は北朝鮮による核攻撃の脅威と向き合い続けなければならない恐れが強まっている。3カ国の対北ミサイル防衛は「将来の脅威」ではなく、もはや「現実の脅威」への対応だと理解されるべきだろう。

韓国は日本と直に協定を

 今回の演習で日韓は、2014年に日米韓が締結した「防衛機密情報を共有する覚書」に基づき米国を介して情報共有するが、本来は日韓が直に軍事情報をやりとりするのが望ましい。韓国は事の重大さに鑑み、反日世論がネックとなって頓挫したままの日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の締結にも踏み出してほしい。