米軍熊本支援、オスプレイ批判こそ筋違いだ


 余震が続く熊本地震被災地への米軍の空輸支援が始まっている。交通網が寸断された被災地では、自治体職員はじめ警察や消防、自衛隊、ボランティアなどによる捜索・救出、復旧活動、避難者支援が続いているが、突発的な大災害に外国からの支援があることはありがたいことだ。ところが、このような苦境にある自国の被災者への支援にもかかわらずイデオロギー的な米軍批判があるのはいただけない。

 南阿蘇村に物資輸送

 政府は16日に起きた熊本地震の本震で被害がさらに広がると、17日に米軍の空輸支援の受け入れを表明。在日米海兵隊が任務に当たり、18日に沖縄県・普天間基地所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが山口県・岩国基地を経由して、熊本県益城町の陸上自衛隊高遊原分屯地から支援物資を南阿蘇村・白水運動公園に輸送した。

 また、19日には海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「ひゅうが」に着艦して支援物資を積み込み、南阿蘇村に運んだ。日頃からの米軍と自衛隊の合同訓練、信頼関係がなければできない連携だ。安倍晋三首相、中谷元・防衛相ら政府が米国側に謝意を表明したのはもちろんであり、現地の長野敏也南阿蘇村村長もオスプレイのパイロットと握手をして礼を述べている。

 しかし、かつてオスプレイ配備に対して「事故が多い」と印象付けて反対した朝日新聞、琉球新報、沖縄タイムス、共同通信の配信を受ける地方紙などが、同機による空輸支援をも批判している。野党も共産党の仁比聡平参院議員が18日の参院決算委員会で危険性を主張し、共産党と共闘する民進党内にも批判する意見がある。

 オスプレイが国内の基地に配備され始めた2012年の同機の事故率は1・12で、それ以前に就役していたヘリコプターCH46Eの1・14より低く安全性は高い。しかも、オスプレイは速度も航続距離もCH46Eより優れており、今回の空輸支援でもその能力を発揮している。

 地震の被災者に救援物資を届ける人道支援に、オスプレイ批判を持ち出すのは、日米安保条約や在日米軍と自衛隊に反対してきた共産党、および同党と安保法制廃止で共闘する民進党など野党の一部、かつて反安保論調を展開し、現在は安保法制に反対している一部マスコミにおいて顕著である。

 民主党政権時代には東日本大震災が起き、米軍は「トモダチ作戦」を展開。がれき状態の仙台空港を迅速に修復するなど大きな実績がある。民進党は参院選はじめ国政選挙で共産党と共闘するが、大規模災害の際に米軍と連携する政策を打ち出せるか不安を残す。オスプレイ批判で、民進、共産両党の災害対策の実効性が問われよう。

 日米同盟の意義確認を

 また、米軍の持つ機能は大規模災害時の緊急対処においても世界最高水準であり、これを容易に享受しうることは、むしろ幸運という考え方はできないものか。世界各国に多くの大災害があり、そのすべてに米軍が対処するわけではない。自衛隊の貢献も誇らしい上、日米同盟の意義も認識できよう。