米国防長官歴訪、対中牽制で海洋秩序維持を


 カーター米国防長官は現在、アジア・中東を歴訪している。とりわけアジア歴訪は、中国の強引な海洋進出を抑え、インド洋や南シナ海の海洋秩序維持を図る狙いがある。

 比との合同演習を視察

 最初の訪問国インドでは、インド洋などでの民間船舶の航行情報を共有し、海洋監視で協力する意向を確認した。インド洋進出の拠点づくりを進める中国の動きに、米印が神経をとがらすからに他ならない。

 次のフィリピンでは、米比両軍合わせて約8000人が参加する合同軍事演習「バリカタン」を視察。アキノ大統領、ガズミン国防相らとの会談では、南シナ海で米比両軍の共同哨戒活動を定期的に実施していくことで合意した。

 今回のアジア歴訪の目的は、アジア太平洋地域へのリバランス(再均衡)政策の強化にある。米海軍は昨年10月と今年1月に、南シナ海で中国が主権を主張する人工島から12カイリ内に軍艦を派遣する「航行の自由」作戦を実施している。

 カーター長官は歴訪に先立ち、ニューヨークの外交評議会でアジア太平洋戦略について講演。「中国による軍事化の動きは規模と範囲で際立っており、関係国はかつてなく懸念を高めている」と指摘し、人工島造成などを通じて南シナ海を軍事拠点化しようとする中国を批判した。

 オーストラリア軍も参加したバリカタンには、日本が今回もオブザーバーで参加している。米国防総省高官は「自衛隊が定期的に正式参加するようになる」との見通しを示した。

 日米同盟を外交・安全保障の基軸とする日本として、正式参加は対中牽制(けんせい)の観点から当然と言える。

 バリカタン開始に当たり、練習航海中の海上自衛隊の4000㌧級潜水艦「おやしお」が護衛艦2隻とともに、フィリピン北部・ルソン島のスービック湾に寄港した。参加人員は3隻で計約500人で、日本の潜水艦の寄港は15年ぶり。護衛艦2隻はその後、ベトナム南部のカムラン湾に向かった。海自の寄港は初めてとなる。

 米印両海軍が毎年行っている海上共同訓練「マラバール」は、今年は南シナ海に近いフィリピン北方海域で行われる。海自もこれまでに4回参加しているが、今年から継続参加することが決まっている。

 日本としては、東シナ海における沖縄県・尖閣諸島周辺での中国の行動拡大を常に意識しながら、いずれは南シナ海での定期的な哨戒活動を考える必要がある。

 その段階に行く前に、例えばインド洋などでの合同演習終了の帰途、日米の艦船が南シナ海を一緒に航行したり、海自が今回の訪比のように親善訪問を繰り返したりして南シナ海で巡視活動を実施することは、積極的に進めるべきである。中国は苦々しく思うが、文句を言われる筋合いはない行動だ。

 自衛隊の参加増やせ

 自衛隊の合同演習参加が目に見える形で増えることは、各国との連携を通じてインド洋、東・南シナ海の中国海軍に圧力を掛け、地域の安定に資することになる。