熊本地震、被災者支援と復旧作業急げ
熊本県内でマグニチュード(M)6・5、最大震度7の地震が発生し、20~90代の男女9人が死亡、1000人以上が重軽傷を負った。被災地では断水やガスの供給停止などが続いている。被災者の支援と復旧作業が急がれる。
屋外避難の被災者も
国内では東日本大震災以来となる震度7を観測した熊本県益城町では、多数の家屋が倒壊。自衛隊と警察、消防が捜索活動を続け、逃げ遅れた人がいないか確認を進めている。現在のところ発見されていないが、万一倒壊した家屋の下敷きになっている被災者がいれば時間との戦いになる。徹底した捜索を求めたい。
県内では余震が続き、一時約4万4000人が避難した。昨日午前11時までの余震の発生ペースは、1995年に発生し、6400人以上の死者・行方不明者を出した阪神大震災(M7・3)を上回った。気象庁は、今後1週間は震度6弱程度の余震が起きる可能性があるとしている。十分に注意してほしい。
避難所がいっぱいで、車の中や公園など屋外に避難している被災者もいる。熊本県など九州北部では、今晩から明日にかけての雨量が多い所で100~150㍉と予想されている。早急に安全な避難所を確保しなければならない。地震で地盤が緩んでいるため、大雨による土砂災害への警戒も不可欠だ。
安倍晋三首相はきょう、現地で被災状況を視察する予定だ。被災者のニーズを丁寧に聞き取り、適切できめ細かい支援につなげる必要がある。
政府の地震調査委員会は、今回の地震が日奈久断層帯の三つある区間のうち、北端の高野-白旗区間がずれて起きたとの評価をまとめた。この区間の北西側がほぼ北へ、南東がほぼ南へ動く「横ずれ」が起きたとみられる。
阪神大震災と同じタイプで、こうした地震は局地的に激しい揺れになることがある。今回もM6・5と地震の規模は比較的小さかったが、震源の深さが約11㌔と浅かったため、揺れが大きくなって被害につながった。
高野-白旗区間は、益城町から熊本県宇城市までの長さ約16㌔。活動時にはM6・8程度の地震が起きる可能性があるとされていた。耐震対策が十分だったかの検証も求められる。
また最大余震の際に、高層ビル上部などが大きく長く揺れる「長周期地震動」が起きたとみられ、気象庁は熊本市や熊本県玉名市などでは4階級で最大4の揺れだったと推定した。推定を発表し始めてから、4は全国で初めてだ。高層ビルの多い都市部では、家具類の固定などの対策が万全かどうか改めて確認する必要があろう。
減災への取り組みを
地盤が比較的軟らかい地域では、M6・5程度で震度6強の揺れが起きる場合もある。それぞれの家庭や地域で減災への取り組みを進めたい。
日本では今後30年以内に、首都直下地震が70%、南海トラフ巨大地震が60~70%の確率で発生するとされている。今回の熊本地震のように、それは突然襲ってくる。対策強化を加速しなければならない。