巨人野球賭博、徹底調査と育成強化を図れ


 社会人、あるいは人間として模範となることを求めた創立者の正力松太郎の遺訓「常に紳士たれ」はどこに消えてしまったのか――。

公式戦で現金の授受も

 昨年秋に発覚した巨人の野球賭博問題では、笠原将生投手ら3投手が日本野球機構(NPB)から無期失格処分を受けたが、新たに賭博に手を染めていた現役投手が出てきて波紋を広げている。入団5年目で通算139試合に登板した高木京介投手で、週刊誌の取材で球団から再調査され追い込まれた末に認めた。賭けは2年前に公式戦を対象に行い、8~9試合で計50万~60万円負けていたというものだ。巨人戦での賭けはせず、八百長(敗退行為)は否定した。

 それとともに、新たに巨人の複数の選手が自軍の公式戦の勝敗に絡んで金銭のやりとりをしていたことが分かった。選手が試合ごとに、1人5000円ずつ出し合い、試合前に「験担ぎ」に円陣を組み掛け声を発した選手が勝ち試合なら総取りし、負ければその選手が全員に1000円ずつ払うというもの。

 現金が絡み出したのは4年ぐらい前からだとされるが、こうなると問題ないとは言えなくなる。同様な行為は昨日、阪神でも行われていたことが分かった。今は禁止したというが、倫理観の欠如した環境の浄化が球界全体に求められるのである。

 巨人軍は昨年秋の3投手に続く今回の高木投手と一連の不祥事で、白石興二郎オーナー、桃井恒和会長、渡辺恒雄最高顧問の3首脳が引責辞任した。当然のことではあるが、これで球団の責任が果たされたわけではない。昨秋の問題発覚で、球団とNPBがとった調査と対応は詰めの甘さが露呈した。捜査権を持たない球団の調査には限界があるとはいえ、他選手の名前も取り沙汰された中で高木投手の関与をあぶり出せなかった。

 巨人が全選手、スタッフを対象に行った聞き取り調査で、高木投手は賭博への関与を否定した。高木投手を賭博に引き込んだとされる笠原元投手は調査に非協力。賭博の仲介役となった飲食店経営者の男性は、巨人の調査協力要請に応じなかった。しかも飲食店経営者は、笠原元投手とともに高木投手に対して電話で口裏合わせを求めるなど巧妙に隠蔽工作を仕組んでいたことなどが分かってきた。

 問題は根が深く今後も尾を引くのは避けられない。この際、うみは全て出し切り球界浄化と再発防止を図ってもらいたい。

 同時に、すでに警視庁の暴力団担当部署が捜査に乗り出している。独自の調査に限界がある以上、球界はこれに全面的に協力して徹底的な事実の解明を図る必要がある。この問題は外部の力を借りてでも浄化を推し進めなければ、信頼回復は望めないと覚悟すべきだ。

球界は誘惑への警戒を

 野球賭博は八百長につながる可能性が高く、背後で暴力団が糸を引くケースが少なくない。それに誘い込む誘惑がさまざまな形でなされることをNPBも球団も警戒し、今回の問題を球界全体の教訓とすべきだ。日ごろから研修を重ねるなど、選手が違法行為に引き込まれないよう育成に力してもらいたい。