北ミサイル発射、もう特段の制裁しかない
北朝鮮が北西部の平安北道鉄山郡東倉里にある施設から事実上の長距離弾道ミサイルを発射した。
国際社会の度重なる自制要求を無視した蛮行であり、先月の4回目核実験に続く国連安保理決議に対する重大な違反だ。北朝鮮の核・ミサイル問題は解決がどんどん遠ざかる深刻な局面に差し掛かったと言える。
「国防力発展」に言及
今回の発射に対する正確な情報収集と分析にはまだ時間を要するが、2012年12月に北朝鮮が同じように「衛星打ち上げ」と称して発射した長距離弾道ミサイルと飛行ルートや落下地点で類似している。米本土を射程に入れた大陸間弾道ミサイル(ICBM)級を目指したもので、改良の跡もうかがえる。
発射台はより長くなったもようで、射程延長を念頭に置いたようだ。上空で分離された1段目ロケット本体と2段目ロケットのカバーが落下するまでのそれぞれの時間が前回より短縮され、飛行速度が速まった可能性も指摘されている。
北朝鮮国営の朝鮮中央テレビは昨日正午(北朝鮮時間)の「特別重大報道」で「光明星4号は軌道進入に完全に成功した」と自画自賛した。16日の故金正日総書記の誕生日「光明星節」や5月に予定される党大会を前に、まだ実績が乏しい最高指導者の金正恩第1書記が国威発揚に利用した形だ。
「重大報道」は今回の発射を「国防力を発展させていく上で画期的事変」と位置付け、軍事力増強への本音ものぞかせた。今後も核実験、長距離弾道ミサイル発射を繰り返すと国際社会に宣言したに等しい。
北朝鮮が最初に弾道ミサイル発射と核実験を強行した2006年から今年で10年がたつ。この間、北朝鮮には国連安保理決議に基づく国際社会の制裁や日本による独自制裁が加えられてきた。哨戒艦撃沈を契機に韓国独自の制裁も発動された。だが、核・ミサイルの脅威は逆に拡大の一途をたどっている。
今回のミサイル発射を受け、国連安保理は緊急会合を開催し、日米韓3カ国に欧州連合(EU)やオーストラリアを加えた西側諸国がこれまでにない強い圧力を加えるため協議に入った。
対北制裁で必ずぶつかるのが慎重姿勢を崩さない中国の壁だ。中国が参加するか否か不透明では効果がない。もう特段の制裁でしか北朝鮮の暴走を食い止めることはできない。その意味で、米韓が迎撃態勢強化へ終末高高度防衛(THAAD=サード)ミサイル配備をめぐり公式協議を開始すると明らかにしたのは意味がある。
日本政府は万が一の場合に備え迎撃態勢を強化していた。自衛隊による破壊措置の実施はなく、ミサイルが上空を通過したとみられる沖縄県では落下物による被害がなかったことに安堵感が広がった。しかし、これがコースも時期も予告しない「本番」であれば、どう対応していただろうか。本物の危機対応能力が問われている。
拉致解決策も模索せよ
核・ミサイルと共に解決が遅れている日本人拉致の問題も合わせて特段の策を模索すべきは言うまでもない。