清原容疑者逮捕、球界も薬物禁止啓蒙で貢献を
元巨人の桑田真澄投手とともにPL学園「KKコンビ」で甲子園を沸かせ、プロ野球では西武や巨人の中心打者として活躍し、選手引退後は野球解説者のほかタレントとして活動してきた清原和博容疑者(48)が覚せい剤取締法違反(所持)容疑で警視庁に逮捕された事件は、著名人が引き起こしただけに社会に大きな衝撃を与えている。
番長キャラで入れ墨も
自宅マンションからは覚せい剤が入った袋、注射器やストロー、吸引パイプなどの器具も見つかり押収された。当局は使用容疑でも捜査を進めるが、本人は「私が使用するために持っていた覚せい剤に間違いない」と容疑を認めているという。
週刊誌が2年ほど前に薬物疑惑を報じたが、本人は強く否定していた。だが、結局は嘘(うそ)だった。当局の1年以上にわたる慎重な内偵捜査で、報道を裏付ける愚行が明らかとなった。タレントとしてはちょいワル番長キャラで売り、やくざ風のファッションや入れ墨などを行き過ぎだと指摘し危惧する声もあったが、省みられることはなかった。
甲子園球児からスター街道を突っ走り、周りからちやほやされて増長し、誰も忠告できなくなり、彼も耳を傾けることのできる自分を失っていたのであろう。そうして暴走の末に、ファンと社会を裏切ったのである。
芸能界やスポーツ界の有名人が薬物事件や野球賭博問題を引き起こすたびに、解明が求められるのは反社会勢力との絡みである。球界では昨年、野球賭博に関わったとして巨人の3選手が無期限失格処分を受けたばかり。どちらも暴力団の資金源になっている可能性が強く疑われる犯罪である。
警察庁によると、薬物事件で年間に摘発する容疑者の8割超を占めるのが覚せい剤事件である。摘発された覚せい剤事件の容疑者が昨年、一昨年とも1万1000人弱、このうち一昨年の暴力団関係者は6000人余で55・0%に上る。
こうした過半数を占める状態は05年から続いていて「薬物の供給元を絶たなければ、末端使用者である著名人の事件もなくならない」(捜査関係者)事態なのである。当局の徹底した解明に期待したい。
今回の事件がプロ野球界に与えるダメージが大きいことは言うまでもない。汚れた“ヒーロー”によって被るイメージダウンは計り知れないが、野球賭博事件で始めた再発防止と信頼回復に向けた取り組みをさらに強めて進めることが肝要である。
同時に球界として、選手らがシーズンオフにドーピングを含め薬物の知識をしっかり得られる制度を設けてはどうか。その上で、子供たちに薬物についての正しい認識を伝える手助けをするなど、知名度を生かして薬物禁止を啓蒙(けいもう)する社会貢献活動に積極的に参加することも検討していいのではないだろうか。
社会復帰支える対応を
もう一つは清原容疑者の更生をどう手助けできるかの課題がある。日本の社会は、薬物犯罪者に刑罰を科すだけで、社会復帰を支えるシステムが未成熟――と専門家は指摘している。再犯防止のためにも、関係機関の対応を求めたい。
(2月5日付社説)