廃棄カツ横流し、安ければと安易な判断戒めよ


 廃棄した冷凍カツを流通市場に横流しし、それが消費者の口に入った不正転売事件は、これまでの食品にまつわる各種の事件の中でも類例のない極めて悪質なものと言わなければならない。健康と命にかかわる食の安全をあざ笑うかのような、こんな手口が今回の発覚までまかり通ってきたことには、ただ唖然とさせられる。

スーパーなどで販売

 事件はまだ捜査中だが、県や警察をはじめ関係当局は不正の実態を速やかに明らかにしてもらいたい。その上で、不正者への法による厳正な処罰を行い、再発防止策を講じるとともに、食の安全性を高める更なる措置をとるよう求めたい。高い食の安全は、2020年の東京五輪・パラリンピックを前にして、国際社会に信用される日本の衛生管理を示すことにもなるのである。

 事件は、カレーチェーン「CoCo壱番屋」を展開する壱番屋(愛知・一宮市)が廃棄した冷凍カツが不正転売され、スーパーなどで販売されていたもの。この11日に、壱番屋チェーン店店員が、チェーン店以外では販売されないはずのビーフカツをスーパーで見つけたことから発覚した。

 壱番屋は13日、廃棄した冷凍ビーフカツ約4万枚の一部が不正転売されたと発表し、注意を呼び掛けた。その後、愛知県とともに調査を進め、廃棄を依頼した産業廃棄物処理会社「ダイコー」(愛知・稲沢市)から製麺業「みのりフーズ」(岐阜・羽島市)に横流しされ、いくつかの業者を経てスーパーなどの店先に並んだことが分かった。ゴミが商品に変わっていった闇の手口の構図が浮き彫りになったのである。

 こうした廃棄処分品の不正転売は壱番屋のビーフカツだけでなくチキンカツ、メンチカツなどでも行われていた。また、その後の調査では、マルコメの廃棄処分味噌も不正転売された可能性が高いほか、みのりフーズからは処分されたはずの日本生活協同組合連合会のびんちょうまぐろのスライスなど108品目が見つかっている。闇の奥を徹底して調査してウミを出し切ることが求められる。

 食品の偽装問題はこれまでも社会を大きく騒がせてきた。客の食べ残しを調理し直して別の客に使い回ししていた高級料亭や、売れ残り商品を包装し直し製造年月日を偽って販売していた有名和菓子店、ラベルを付けてニセブランド牛を供給した業者などがあるが、悪質さにおいて今回のケースはそれらの比ではない。

 事件を受け、愛知県は県内で食品廃棄物処理を行う53事業所の立ち入り調査に入った。再発防止には、排出事業者が最終処分まで見届けることを義務化する必要があろう。

リスク考える知恵を

 もう一つは業者が悪いのは言うまでもないが、仕入れる販売店と買う消費者も、激安商品については、その安さに疑いを持ち、安さに伴うリスクを常に考えた上で購入の是非を決めるよう心掛ける知恵を持ちたい。健康と直結する食品はただ安ければそれでいいと安易に判断するわけにはいかないのである。

(1月20付社説)