日印首脳会談、地域の平和と発展につなげよ
インドを訪れた安倍晋三首相は、モディ首相と首脳会談を行い、経済や安全保障での協力推進をうたった共同声明を発表した。南シナ海などで海洋進出を強めている中国を念頭に、日印に米国を加えた3カ国の安保分野での連携強化も確認した。地域の平和と発展につなげたい。
原子力協定で原則合意
会談では、5年にわたり協議を続けてきた日印原子力協定が原則合意に達した。まずは歓迎の意を表したい。同協定の締結は核拡散防止条約(NPT)非加盟国とは初めてであり、原発輸出の前提となるものだけに、日本の原発メーカーを後押ししそうだ。
また、総事業費1兆8000億円のインド高速鉄道計画に日本の新幹線方式を導入することが正式合意された。事業費のうち最大で1兆4600億円という破格の円借款を供与することでも一致した。新幹線方式の海外輸出は2007年に開業した台湾に次ぎ2例目となる。
日本はインドネシアでは中国に競り負けただけに、インドでの受注をばねにインフラ輸出に弾みを付けたい考えだ。合意には、インド鉄道省職員への訓練や高速鉄道運営に携わる人材育成での協力も盛り込まれた。
中国が近年、新幹線と原子力の両分野での技術力を高め、アジア地域などへの売り込みを強めているだけに、大型案件でインドとの協力を進めることが、成長余地の大きい市場での日本企業のシェア拡大につながることを期待したい。
両首脳は南シナ海での変化に留意し、緊張につながる一方的な行動の回避を呼び掛けた。モディ首相は「南シナ海の交通路は、地域のエネルギー安全保障およびインド太平洋地域の持続的な平和と繁栄に重要だ」と、南シナ海問題に言及した。中国の単独主義的な行動を止めるよう促す発言である。
中国はインド洋でも海洋進出を拡大し、軍艦や戦闘機などの戦力を急速に増強している。両首脳はインド太平洋地域の平和と安定のため、紛争の平和的解決、航行の自由などを順守することで一致。両国に米国を加えた3カ国の安保分野での連携強化を確認した。海上自衛隊が今後、米印の海上合同軍事演習「マラバール」に定期的に参加することも決まった。
同じ民主主義国家で法の支配を重視するオーストラリアとも連携を強める。日豪印は6月に外務次官級協議、日米印は9月に外相会合を初めて開いた。安倍首相はこの1カ月間で米豪印の3首脳と相次いで個別会談するなど、根回しを図ってきた。
安倍首相は「強いインドは日本のためになる、強い日本はインドのためになる。モディ首相と協力して、アジアや世界の平和と繁栄を牽引する」と述べた。モディ首相は「アジアの進む道と私たちの海洋地域の連結を形成するのに、日印以上に重大な影響力を与える戦略的な関係は考えられない」と強調した。
両国の新時代が到来
今回の共同声明では、日印両国を「アジアの最大かつ最古の民主主義国家」と表現し、共通の価値観で結ばれていることを強調した。まさに日印新時代の到来である。
(12月16日付社説)