調査捕鯨、商業再開視野に目的達成を
南極海での調査捕鯨の再開へ向けた船団が下関港から出航した。オーストラリアなど反捕鯨国の提訴を受けた昨年3月の国際司法裁判所(ICJ)の中止命令を踏まえ、昨年度の調査は目視のみにとどめていたため、約2年ぶりの再開となる。
目標頭数を大幅に減らす
わが国は昨年11月、南極海における新たな調査捕鯨計画を国際捕鯨委員会(IWC)に提出、準備を進めてきた。今次はクロミンククジラ333頭の捕獲を目指し、生態を詳しく調べる。またクジラを捕獲しない非致死的な調査も増加させる。
国際的な反捕鯨世論や過激な反捕鯨団体シー・シェパードなどの妨害で、わが国の調査捕鯨は追いつめられ、国民の理解や関心も低くなっている。しかし、あくまで商業捕鯨再開を視野に入れた活動であることを念頭に目的を達成してもらいたい。
昨年、ICJは南極海における日本の調査捕鯨を、科学的調査とは見なされず、従ってそれは商業捕鯨である、と断定。商業捕鯨モラトリアムを受け入れているわが国は、中止命令に従うしかなかった。
科学的と見なされなかった理由の一つが、調査に必要な目標の頭数を捕獲しなかったことだった。そのこともあり、前回の目標頭数が850頭だったのに対し、今回は333頭と大幅に減らした。
しかし目標の数を捕獲できなかった大きな理由の一つは、シー・シェパードなどの妨害行動があったためである。
シー・シェパードは今回の調査捕鯨再開を非難したが、これに対し菅義偉官房長官は「調査への違法な妨害行為は船員の生命を脅かしかねない」とし、「関係省庁で連携して安全対策を実施する」と述べた。しっかりとサポートしてほしい。
目標の333頭については「性成熟年齢について、十分な精度をもって推定するために必要となる捕獲頭数」となるか疑問視する専門家もいる。反捕鯨世論に妥協した目標と言われても仕方ない面がある。
調査捕鯨の名の下に商業捕鯨をしているという誤解を生まないためにも、IWCの目標の一つである「資源が豊富な鯨類の持続的利用」つまり、科学的な調査をもとに持続可能な形で商業捕鯨を行うことの正しさを掲げ、堂々と調査捕鯨を実施すべきである。
人口増加が続く中で食糧を確保するためには、大量の水や穀物を消費する牛などの畜肉への過度の依存は改める必要がある。それを補完するタンパク源として、クジラは有効に利用されるべきである。
捕鯨禁止でクジラ類が増え過ぎ、イワシやサンマ、スケトウダラなどが捕食され資源量を減らし、漁業に大きなダメージを与える恐れもある。実際、南極海や北西太平洋のクジラ類は一部を除いてかなり増えている。
価値観を押し付けるな
IWCは今や反捕鯨国のクラブになりつつあり、商業捕鯨モラトリアムの見直しを決めながら、いまだ実施されていない。絶滅危惧種を守ることは当然だが、どの国もクジラを特別視して、自分たちの価値観を押し付ける権利はない。
(12月9日付社説)