野球賭博、全容解明でウミを出し切れ


 巨人の福田聡志投手の野球賭博疑惑を調査している日本野球機構(NPB)の調査委員会(大鶴基成委員長)は、福田投手のほか、同球団の笠原将生投手と松本竜也投手が野球賭博をしていたと発表した。

 調査委は1カ月以内に最終報告をコミッショナーに提出するが、他球団も含め他に関与している選手はいないのか。全容を解明してウミを出し切らなければならない。

 巨人の3投手が関与

 笠原投手は、野球賭博の仲介役とされ税理士法人勤務と称する男性A氏を福田投手に紹介した。自身は賭博をしていないと説明してきたが、2014年4~10月にプロ野球20試合以上に賭けていた。この時期に1軍の試合で登板していた。

 さらに福田、笠原両投手はA氏と金銭を賭けたマージャンやバカラも行っていた。松本投手も同時期に十数試合を対象に賭博をしていた。ファンを裏切る愚行であり、プロ野球の信頼失墜につながりかねない。

 調査ではA氏とは別の仲介役として飲食店経営という男性B氏の存在も明らかになり、調査委は両氏を野球賭博常習者と認定した。B氏は球界に精通している人物とみられ、3投手以外の選手の名前が出てくる可能性もある。

 野球賭博は暴力団の資金源となっている。反社会勢力を利する行為は決して許されない。

 野球協約では八百長などの不正行為(永久失格処分)を177条で、賭博行為の禁止及び暴力団等との交際禁止(1年間か無期の失格処分)を180条で規定している。3投手とも八百長行為は確認できなかったとはいえ、厳しく処分すべきであるのは当然だ。

 野球賭博に関してプロ野球史には大きな汚点がある。1969年から71年にかけて世間を騒がせた「黒い霧事件」だ。パ・リーグの強豪チームだった西鉄の選手が、八百長行為を働いたとしてコミッショナーから永久追放処分を受け、暴力団関係者との交際も社会問題となった。オートレース賭博も絡んだ疑惑は東映、中日など他球団にも広がった。

 この事件を教訓に、NPBは警察、日本プロ野球選手会と一体となって暴力団等排除活動などを展開してきた。だが今回の問題で、こうした努力も水泡に帰しかねない。巨人とNPBは強い危機感を持つべきだ。全容を解明してウミを出し切るとともに再発防止に全力を挙げる必要がある。

 今年もプロ野球のドラフト会議が行われ、高校野球などで大きな注目を集め、将来の活躍が期待される選手が各球団の指名を受けた。

 このような有望な選手たちが野球賭博や八百長行為などに手を染めないよう、教育の徹底も求められる。

 選手は人格面でも模範に

 プロスポーツ選手は若くして大きな収入を得ることがあり、反社会勢力に狙われやすい。相撲界でも野球賭博が問題となったのは記憶に新しい。

 各球団には野球の技術だけでなく、人格面でも子供たちの模範となるような選手を育ててほしい。

(8月23日付社説)