国民投票年齢の「当面20歳」は妥当な判断だ


 憲法改正のための国民投票の資格年齢を18歳以上とするか、それとも20歳以上か。与党内で意見が分かれているが、自民党は「当面20歳以上」にする方針を決めた。投票年齢は選挙権年齢や成人年齢と深く関わっており、影響も考慮せず18歳以上とするのは問題が多い。自民党の判断は妥当だ。

 懸念される「18歳成人」

 国民投票法は「投票年齢は満18歳以上」と定めるが、その一方で付則において選挙権年齢や成人年齢も18歳以上とするために「必要な措置を講ずる」とし、それまでの間は国民投票の年齢も「満20歳以上」としている。だが、「必要な措置」の結論が出されてこなかった。

 このため自民党は、選挙権年齢や成人年齢が18歳以上と法改正されるまで国民投票の年齢を20歳以上とすることにした。これは適切な対応だ。そもそも投票年齢を「18歳以上」とし、成人年齢をそれに合わせるとしたこと自体が安易過ぎた。成人年齢に関する法律は公職選挙法のみならず少年法や飲酒、喫煙の禁止法のほか、銃刀法、競馬法など191件もあり、引き下げの影響は極めて大きい。

 18歳から飲酒や喫煙を認めれば精神・肉体的な悪影響があるばかりか、性風俗分野での低年齢化も招き、有害情報による被害拡大も危惧され、問題視する声が多い。内閣府が昨年行った世論調査でも、飲酒や喫煙の年齢制限を20歳以上とする現行法を支持する人が8割近くを占めている。

 また民法の成人年齢について法制審議会は2009年、政治の要請に応じ18歳以上を適当とする答申を出したが、さまざまな問題点も指摘していた。例えば、成年になれば高額商品の購入契約や消費者金融からの借り入れも可能になるが、18~19歳の若者の半数以上は学生で、社会の商慣習に不慣れだ。

 それでマルチ商法などの被害に遭ったり、困窮化を招いたりしかねないと、答申は懸念を示していた。内閣府が08年に行った世論調査では、親の同意なしに高額商品を購入できる年齢を18歳に引き下げることに約8割が反対している。

 忘れてはならないのは、成人年齢に達すれば権利とともに責任と義務が生じるということだ。米国の成人年齢は当初、21歳以上だったが、ベトナム戦争時の徴兵年齢18歳以上を背景に、大半の州が18歳以上に引き下げた。アフリカなど新興国の「18歳成人」もほとんどが徴兵年齢に基づく。一部で「18歳成人は世界の潮流」との声があるが、それは「国家への義務」を前提にしている。

 こういう視点も成人年齢の論議では求められる。国民投票法の規定だけを根拠に18歳成人を主張するのは乱暴だ。教育再生に関しては「6・3・3制」の改革が取りざたされており、それも18歳成人と関わる。つまり多岐にわたる論議が必要だということだ。

 改憲の足かせにするな

 さまざまな角度から成人年齢を検討し、結論が出るまでは「当面20歳以上」とするのが妥当である。国民投票年齢に関して意見が分かれていることを、改憲の足かせとすべきでない。

(11月15日付社説)