小型機墜落、徹底究明で再発防止に当たれ


 東京都調布市の民家に小型プロペラ機が墜落し住民1人を含む3人が死亡した事故で、警視庁調布署捜査本部は業務上過失致死傷容疑で、小型機を整備・管理する「日本エアロテック」(調布市)など関係先を家宅捜索した。

重量が飛行ギリギリ

 今回の事故は、小型機が調布飛行場を離陸してから数十秒後に発生した。通常の整備を経ていればあり得ないことだ。現場が住宅密集地であったため社会的影響は大きい。墜落原因の解明と再発防止策を徹底し、飛行場周辺住民の不安を払拭(ふっしょく)しなければならない。

 目撃談などから、墜落した小型機は800㍍の滑走路を通常よりも長く滑走し、端の方で離陸していた。また飛び立った後、明らかに低空飛行で、エンジン出力が低いことを示す低周波音がずっと続いていたという。結局、高度が上がらないまま、左右にふらつくなど不安定な状態で墜落した。滑走路を走行していた段階で、エンジンか燃料系に重大なトラブルがあった可能性がある。

 航空法では出発前、機長に機体の重量などを点検する義務がある。しかし、小型機には5人が搭乗したほか、5時間分のほぼ満タンの燃料が積載されており、離陸可能な重量ギリギリだったとみられている。機長は重量に対する事前配慮を怠ったことも考えられる。

 また調布飛行場では遊覧飛行は禁止され、操縦士の技術維持を目的とする「慣熟飛行」だけが許可されている。その際、搭乗者は乗員予備軍であるという条件があるが、そうではなく機長の知人らだった。飛行目的があいまいだった可能性もある。

 これらの人的要因が考えられるほか、当の小型機は2004年に札幌市の空港で着陸に失敗する事故を起こし、エンジンを損傷していたことも明らかになった。今回の事故との関連を追及すべきだ。また連日の猛暑で、エンジン機能が低下したという見方もある。

 家宅捜索を受けたのは、小型機の整備・管理会社のほか、死亡した機長が社長を務めていたパイロット養成会社(同市)、小型機の所有会社(東京都福生市)の3カ所。小型機は年1回の国の耐空検査に5月に合格したばかりで、今回の飛行では、整備会社から機長の会社に時間貸しされていた。

 この3社が日ごろ、安全対策についてどう関わり合っているか、今回の飛行でも十分な配慮があったかどうか、小型機の賃貸や整備状況の実際についての詳しい調査が必要だ。

 一方、今回の事故で、調布飛行場周辺の住民からは大きな不安の声が出ている。調布飛行場は、伊豆諸島への定期便や自家用機の拠点として重宝されている。昨年の離着陸数は約1万6000回で、うち自家用機や、整備のために来る外来機は1割程度の約1600回だ。

周辺住民の安全確保を

 舛添要一・東京都知事は「『自家用機はやめて』という意見も出ているので、視野に入れて考えるべきだ」と、飛行場の運営の見直しに言及している。住民の安全を確保するための判断が注目される。

(7月30日付社説)