中国鶏肉食品、事件の徹底的な真相解明を


 中国上海市の食品会社「上海福喜食品」が、期限切れの鶏肉などを使った加工食品を、日本マクドナルドやファミリーマートに出荷していた事件で、日本マクドナルドは中国で製造された鶏肉商品の販売を中止した。今のところ国内で健康被害の報告はないが、食の安全に対する不安が広がっている。中国当局は事件の原因や責任の所在を徹底的に解明し公表すべきだ。

 繰り返す「食品事件」

 現地メディアによると、上海福喜食品は6日間の使用期限を過ぎ、半月経過した鶏肉を使っていた。上海のテレビ局の報道では、床に落ちた肉を拾ってラインに戻した従業員が「食べても死ぬことはない」などと笑いながら話す場面や、腐って緑色になった肉が映し出された。

 中国・上海市公安局は、上海福喜食品の責任者や品質担当者ら5人を刑事拘束して「組織的な違法生産・経営行為」の疑いがあると発表した。上層部の指示で長年の慣行になっていた可能性もあるという。また市当局は、期限切れの原料を加工したとして「チキンマックナゲット」など関連製品約100㌧を差し押さえた。

 2008年に起きた中国製ギョーザの中毒事件で、中国当局による捜査着手の遅れが問題になったが、それと比較すると今回は機敏な対応というべきだ。しかし問題は今後の不正解明、刑事責任の追及であり、その結果が中国国内の食品メーカーの安全管理強化につながることである。当局は食に関する重大問題であるとの姿勢を最後まで貫くべきだ。

 さらに安全管理徹底の実現には国全体の地道な努力が必要であり、今回の事件を一過性のものとして済ますべきでない。中国当局の国民への啓発、企業経営者や従業員の社会的責任の自覚を涵養する契機にしたい。

 中国では食の安全を揺るがす事件が繰り返されてきた。中国製ギョーザの中毒事件では、殺虫剤の入った冷凍ギョーザで中毒患者が相次いだ。

 これらを教訓に日本マクドナルドとファミリーマートは、上海福喜食品からのナゲット輸入取引の前後に工場内の製造工程の監査やサンプル検査を独自に実施してきたが、現地工場の不正までは見抜けなかった。かなり厳しいチェック体制を取ってきただけに、ショックは大きいようだ。

 しかし、中国製食品を扱う企業の危機管理の在り方についても問われるべきだ。すでに食に関する中国リスクは重々承知のはずだが、価格が安いため、両社のみならず多くの日本企業が輸入している。今回のような事態も十分に予測できたのではないか。中国からの食品輸入額は増加傾向にあり、13年度は魚介類や野菜を中心に9000億円を超えた。

 リスク管理方針打ち出せ

 マクドナルドは問題発覚後、中国製鶏肉商品の販売を中止し、調達をタイ製に一本化するなどの対応を取った。

 それは了とするが、食品管理に対する消費者の不安を払拭(ふっしょく)するという責任を全うするためにも、今後のリスク管理についての方針を打ち出し明らかにする必要がある。

(7月27日付社説)