海の日、海洋国家への戦略再構築を
きょうは「海の日」。「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う」ことを趣旨とする国民の祝日だ。日本人と海との関わりをもう一度見つめ直し、海洋国家としての日本のこれからを考える日としたい。
近海に豊かな埋蔵資源
この数年、海に関して日本が経験した大きな出来事に、2011年の東日本大震災と沖縄県・尖閣諸島周辺での中国船の領海侵犯問題がある。これらは自然災害と外国との軋轢(あつれき)という違いはあるが、ともに日本人の海への関心の低さが背景にあったと言っていい。
東日本大震災は1000年に1度と言われる規模のプレート境界型地震であった。それまで地震研究では陸地の活断層に注目が集まっていたが、一部研究者を除き、プレート境界型地震の震源となる可能性のある三陸沖や南海トラフなどに十分な注意が払われてこなかった。
尖閣諸島についても、われわれはその戦略的、経済的な重要性をどれだけ深く認識していただろうか。わが国の排他的経済水域(EEZ)が、世界第6位の広さを持つことの意味をもう一度考えてみる必要がある。
水産大国を自負してきたわが国だが、世界的な健康志向の中で魚介類の消費が伸びているのとは逆に、日本では消費が減っている。日本近海の水産資源の減少、就労者の高齢化など漁業の凋落(ちょうらく)は著しい。
日本が正真正銘の海洋国家となるためには、そのための戦略を持たなければならないし、それが国家戦略の柱の一つに位置付けられなければならない。安全保障、エネルギー資源、さらには日本の食文化など、どれも海洋と切り離せない。政府は安倍晋三首相を本部長とする総合海洋政策本部を設けているが、海洋政策についての発信を強化すべきだ。
わが国の近海には、次世代エネルギーとして注目されるメタンハイドレート、そしてレアアースや海底熱水鉱床が手つかずのままとなっている。メタンハイドレートは日本の天然ガス消費量の約40年分が埋蔵されていると言われる。これらの資源を生かすことができれば、海洋資源大国への飛躍も夢ではない。
海底の石油掘削技術などは中国に先を越され、海底鉱物資源の探査ではフランスやノルウェーの企業がリードしている。しかし、かつての造船大国日本には潜在的技術力が十分ある。政府は海洋資源探査を進めるために、来年3月までに民間と連携して新組織を設立する。技術開発が強力に推進されることを期待したい。
これとともに今後重要となるのは、海で働く人材の育成だ。海を舞台に仕事をしたいという若者がもっと出てくるよう、政府の後押しが求められる。
領土やEEZの教育を
また豊かな海に囲まれていることを子供たちに伝えるため、学校では尖閣諸島や北方四島、竹島が日本固有の領土であることはもちろん、日本最南端・沖ノ鳥島、最西端・与那国島などについて教える必要がある。国土面積の約10倍あるEEZの地図や日本海溝などが立体的に表現された海底地図に親しませることも有益だ。
(7月21日付社説)