陸域観測技術衛星「だいち2号」、災害監視で一層の国際貢献を


 災害状況の把握や地図の作成などに役立つ陸域観測技術衛星「だいち2号」と大学などが開発した小型衛星4基を搭載したH2Aロケット24号機が打ち上げられ、衛星の軌道投入に成功した。

 だいち2号は「だいち」より分解能がアップし、昼夜・天候の影響を受けずに観測できる。わが国はもちろん、災害の多いアジアで災害監視や温暖化対策のための森林観測など一層の国際貢献に役立ててほしい。

 性能が大幅にアップ

 だいち2号は、2011年5月に運用を終えただいちの後継機。名前の通り、宇宙から大地を観測する。

 だいちは東日本大震災や新潟県中越沖地震、中国・四川大地震などでの被害状況の把握のほか、ブラジル熱帯雨林の違法伐採の監視、国土地理院へのデータ提供など様々な分野で成果を上げた。

 だいち2号に搭載されたレーダーは、だいちより性能が大幅にアップ。新たな観測モード(スポットライトモード)が追加され、分解能は10㍍から1~3㍍に向上し、より精度の高いデータが得られる。昼夜・天候の影響を受けず、暗い夜や、雲が地上を覆う雨天でも観測が可能になっている。

 また、だいちにはなかった左右観測機能を持たせるとともに観測可能領域を870㌔から2320㌔と約3倍に拡大。これによって、迅速に観測できる範囲が大幅に広がり、観測頻度も高められるという。こうした特長を持つだいち2号に対し活躍を期待する声は内外で強い。

 まず、防災では地震による地殻変動や火山の噴火、台風・豪雨時の土砂崩れなどの観測。分解能の向上により、災害による橋の落下や高速道路の損壊なども分かるという。

 また、こうした災害状況の把握に加えて、平常時の国土管理や資源管理などのニーズへの対応だ。国土情報の継続的な蓄積・更新は不可欠である。だいち2号は、より詳細な地図の作成や資源探査のほか、農作地の面積把握の効率化、温暖化対策のためのCO2吸収源となる森林の観測など利用できる分野は多岐にわたる。

 特に自然災害の多発するアジア諸地域の災害対策などに積極的に協力し、一層の国際貢献に役立ててほしい。

 今回の打ち上げで、H2Aロケットは7回目以降、18回連続で打ち上げに成功。成功率95・8%は世界でもトップクラスである。

 打ち上げを担当する三菱重工業は、14日にスカパーJSATから衛星打ち上げサービスを受注。民間企業からの受注は、カナダの衛星運用大手テレサットに次いで2社目、国内企業では初めてである。H2Aで16年度に打ち上げる予定という。受注はH2Aの信頼性向上によるものと言えよう。

 次期ロケット開発に期待

 三菱重工は3月に、20年度に初打ち上げ予定の次期基幹ロケットの開発主体に選ばれ、コストが1基100億円とされるH2Aの半分程度を目指し開発を進めている。

 今回の成功を機に一層の活躍を期待したい。

(5月25日付社説)