日韓協議、首脳会談実現につなげたい
日韓両政府は両国間の懸案について話し合う外務省局長級協議をソウルで開催し、対話を継続することで一致した。来年は日韓国交正常化50周年。両国政府の協議の定期化で関係修復を図り、安倍晋三首相と朴槿恵大統領の初の首脳会談実現につなげたい。
対立を利用する中国
日韓関係は歴史認識問題などをめぐってぎくしゃくしている。安倍政権が自国の防衛体制と日米関係の強化に努めていることを、韓国では日本の“右傾化の兆し”と警戒する向きが少なくない。
しかしオバマ米大統領の仲介で、先月にオランダで日米韓首脳会談が実現し、それを契機に日韓でも実務者による話し合いが始まった。今回の協議には、オバマ大統領の日韓歴訪を控え、関係改善に取り組む姿勢をアピールする狙いがあったことは否定できないが、それでも両国が協議のテーブルに着いたことは大きな前進だ。
オバマ政権が日韓関係の改善を求めているのは、北朝鮮の脅威を前に日米韓の結束が不可欠という認識によるものだ。北朝鮮は日米韓首脳会談に合わせて弾道ミサイルを発射し、その後には「新しい形態の核実験も排除しない」と核問題での強硬姿勢を訴えた。経済建設と核開発の「並進路線」にも変化は見られない。
米国が危惧するのは、中国や北朝鮮が日韓関係にくさびを打ち込み、両国を離反させて日米韓の結束を妨害し韓半島で影響力を強めることだ。さらに韓国の中国経済への依存度が高まるにつれ、韓国が次第に米国から中国との関係に軸足を移すことを憂慮している。
その意味で、中国の習近平国家主席が日韓の対立を利用し、猛烈な勢いで韓国を引き寄せようとしていることを警戒する必要がある。中国が歴史問題で、韓国と「対日共闘」を行っているのも懸念材料だ。
今回の協議では韓国側の要望で、旧日本軍の従軍慰安婦問題を集中的に話し合った。韓国側は、日本政府に「法的責任」の認定や謝罪、賠償を求めた。しかし日韓請求権協定によって、賠償問題は「完全かつ最終的に解決済み」である。さらに日本が「アジア女性基金」を通じて、元慰安婦へ償い金を支払うなど誠意を尽くしていることを韓国も理解してほしい。
事前折衝で日本側は他の課題も議論すべきだと主張したが、韓国側は慰安婦問題のみを議題にするよう要求した。結局、初回は慰安婦問題を取り上げ、2回目以降に竹島(島根県隠岐の島町)や北朝鮮問題などをも議論することで折り合った。
今回は双方の主張が平行線に終わったが、協議に出席した伊原純一アジア大洋州局長は「非常に真摯(しんし)な姿勢で意見交換できた。大変有意義な協議だった」と述べた。次回は来月に東京で開催する方向だ。地道に対話を積み重ね、関係改善につなげてほしい。
防衛協力体制の確立を
日韓は“唇歯の関係”と言われる。今後の協議が北朝鮮や中国の脅威への共同対処や、日韓の安全保障面の協力体制の確立へと進むことを期待したい。
(4月19日付社説)