川内原発の再稼働で「原発ゼロ」脱却を
原子力規制委員会はこのほど、再稼働に向け審査中の原発のうち、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)の安全審査を優先的に進めることを決めた。合格第1号となる見通しだ。
早ければ5月中にも審査をパスし、夏にも再稼働の可能性が出てきた。東京電力福島第1原発の事故で根本的に見直された、世界で最も厳しい規制基準をクリアした原発が再稼働する意義は大きい。
条件整い優先的に審査
もちろん地元の同意を得なければ再稼働はできないが、川内原発が立地する薩摩川内市の岩切秀雄市長は再稼働に積極的で「大きな山を一つクリアできた」とコメントしている。
審査のポイントは、原発で想定される地震の揺れ(基準地震動)と津波の高さが確定していることと、それへの対策である。川内原発の審査が優先されるのは、それらの条件が整ったからだ。
九電は、審査の中で川内原発の基準地震動を申請時の540ガルから620ガルに上方修正し、津波の高さも約3・5㍍から約5㍍に引き上げた。
地震や津波についての審査を担当する規制委の島崎邦彦委員長代理は「細かい数値は多少変わる可能性があるが、川内だけは(ほぼ)確定した」と述べた。設備・機器担当の更田豊志委員も「重大事故対策への取り組みは十分満足できる」と評価している。
新規制基準の下での安全審査は昨年7月に始まり、これまでに8社が10原発計17基を申請したが、審査は遅れがちだ。
川内原発が再稼働すれば、わが国は原発稼働ゼロの状態から脱却できる。先の東京都知事選で脱原発を主張した候補の敗北に続き、「原発ゼロ」の非現実性を理解させるきっかけになるだろう。
政府は先月明らかにしたエネルギー基本計画の原案で、原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、活用する方針を明記している。
実際、日本が経済大国であり続け、今の生活水準を維持するためには、原発の再稼働は不可欠である。
原発の稼働停止で火力発電への依存度が高まり、燃料費の膨張が電力会社の経営を圧迫している。電気料金の再値上げを考えざるを得ない状況に追い込まれ、泊原発が停止したままの北海道電力は先月、昨年9月に続く値上げを検討すると表明している。値上げは、日本の経済、そして家計に大きな重荷となっている。
とりわけ今は、日本経済が長期の停滞から脱却し、活力を取り戻すことができるかどうかの極めて重要な時期である。4月からは消費増税によって消費の落ち込みが予想される。こうした点からも、安全審査をクリアした原発は早期に再稼働する必要がある。
できるだけ早く実現を
川内原発が「特急」扱いで優先審査され、夏にも再稼働にこぎ着ければ、これをモデルケースとして他の原発の審査を効率的に進めることも期待できる。審査をしっかり行い、できるだけ速やかに再稼働を実現してほしい。
(3月17日付社説)