官製談合、制度強化で癒着をなくせ
北陸新幹線の融雪設備工事をめぐる談合事件では、旧態依然とした官民癒着の構図が浮き彫りとなった。
官製談合は公共工事の落札価格を不当につり上げるもので、それだけ多くの税金が支払われることになる。このようなことは言語道断だ。納税者への裏切り行為は許されない。
新幹線の融雪設備工事で
東京地検特捜部はこのほど、発注元の独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」の東京支社幹部を官製談合防止法違反罪で在宅起訴した。また、業者間で談合を繰り返したとして設備工事会社8社と担当者8人も独占禁止法違反で在宅起訴した。ほぼ全員が罪を認めているという。
問題となったのは、2015年春に開業予定の北陸新幹線の長野-金沢間(228㌔)に、線路の雪を溶かす温水パネルやスプリンクラーなどを設置する工事だ。
11年3月~12年11月に発注され、一定の技術力を持つ業者のみが参加できる条件付き一般競争入札が実施された。談合したとされる入札は計8件で、事業総額は約174億円に上る。
業者らは会合を重ね、落札予定業者を決めた。その後、機構職員から予定価格を聞き出して入札額を調整し、競争を制限したという。極めて悪質な官民のもたれ合いだ。
機構が価格を漏らしたのは、入札不調で工期が遅れ、新幹線開業に影響が及ぶことを懸念したためだ。北陸新幹線は1973年に整備計画決定および建設の指示がなされてから40年以上が経過しており、開業遅れは許されないという重圧が機構側にあったという。
だが、どのような理由があるにせよ、こうした官製談合が許されないのは当然だ。
機構は前身の日本鉄道建設公団時代から業者側との癒着が取り沙汰され、談合は慣習に近いものがあったとされる。官民とも自浄能力が欠落していると言わざるを得ない。
再発防止のための取り組みが急がれるが、注目したいのは、今回の事件で一部の業者が、独占禁止法を違反した企業への課徴金の減免制度を利用して談合を自主申告したことだ。
この制度は、06年1月に施行された改正独占禁止法によって設けられた。最初に申告した業者は課徴金を全額免除され、2番目は50%、3番目以降は30%の減免となり、計5社までが対象となる。
カルテルなどの違法行為は秘密裏に行われるため発見される可能性が低く、物証が残らないため解明することも難しい。こうした課題を克服することが狙いだ。
03年1月に施行された官民談合防止法では、06年12月の改正で職員の罰則規定が設けられ、違反した場合は5年以下の懲役または250万円以下の罰金が科される。
しかし、まだまだ甘いのではないか。官民の癒着をなくすためにも制度強化を検討してもらいたい。
課徴金割り増しも必要
課徴金の額も欧米に比べると少ないと言われる。割り増しも考える必要がある。
(3月15日付社説)