原発汚染水の増加抑える対策が急務だ


 東京電力福島第1原発で放射性物質を含む汚染水を保管するタンクから約100㌧が流出した。ストロンチウム90などを含む高濃度の汚染水で、海への流出はないが、土壌などが汚染された。

 1日に400㌧増加

 タンクには汚染水を受け入れるための弁が3カ所あり、本来は全て閉まっているはずなのに2カ所は開いた状態だった。汚染水が供給され続けたため、タンクからあふれた。漏洩(ろうえい)が発覚する前には、タンクの水位が高いことを示す警報が鳴っていたが、異常が確認できなかったため、機器のトラブルと判断したという。

 福島第1原発では昨年8月にも、約300㌧の汚染水が流出している。このような事態が続発すれば、原発に対する国民のイメージがこれまで以上に悪化し、安全性が確認された原発の再稼働にも支障を来そう。政府は東電とともに実効性ある対策を進める必要がある。

 まずはタンクを溶接型に切り替え、漏洩の危険性を低くすることが求められる。また、地下水の流入で汚染水は1日に400㌧ずつ増え続けている。増加を抑えるため、政府と東電は土壌を凍らせた壁で地下水の流入を防ぎ、敷地表面をアスファルトなどで覆って雨水から地下水になる分を減らすことを目指している。できる限り早期に実現すべきだ。

 汚染水の放射性物質を吸着して大幅に減らす装置「ALPS(アルプス)」は、安定的な運用のために試運転を続けているが、トラブルが相次いでいる。先月末にも、試運転中だった2系統のうち1系統で処理ができない状態になった。

 アルプスは今後増設され、1日最大750㌧の処理能力を大幅に増やす。政府と東電はタンクで保管する約34万㌧と、毎日発生する汚染水を2015年3月までに処理する計画だ。このためには、アルプスの問題点を早期に把握し、安定的な運用につなげることが欠かせない。

 汚染水対策の「切り札」とされるアルプスだが、放射性トリチウムは取り除けない。このため、福島第1原発ではアルプス処理後の汚染水についてもタンクで保管している。

 これに関して、昨年12月に日本を訪れた国際原子力機関(IAEA)の調査団は、トリチウムを含んだ水の扱いについて「基準値以下なら放出することも含め、東電はあらゆる選択肢を検証すべきだ」と指摘した。

 敷地内のタンクは約1000基に上っており、保管には限界がある。アルプスで処理された汚染水については、地元の理解を得る上で海に流すことが望ましい。このためにも今回のような流出は何としても避け、信頼を回復する必要がある。

 英知結集し炉内把握を

 福島第1原発事故から間もなく3年を迎える。事故では、1~3号機が炉心溶融(メルトダウン)を起こして核燃料が溶け落ちたが、高い放射線量のため、現在でも原子炉内部の詳しい状況は分かっていない。

 政府と東電は汚染水流出を防止し、廃炉作業を進展させるためにも、状況把握に向けて英知を結集してほしい。

(3月5日付社説)