サンマ漁獲枠合意 資源回復に向け一歩前進


 不漁が続くサンマの資源管理を話し合う北太平洋漁業委員会(NPFC)の年次総会で、2021年の漁獲上限を前年比4割減の33万3750㌧に削減することで合意した。これまで規制強化に後ろ向きだった中国が、日本の提案に対し一定の歩み寄りをしたのは、資源管理への一歩前進と言える。

上限は前年比4割減

 水産庁によると、日本のサンマ水揚げ量は1958年の約58万㌧をピークに減少傾向が続いている。全国さんま棒受網漁業協同組合の調べでは、2020年は前年比27%減の2万9566㌧と過去最低を更新した。そのため価格が高騰し、庶民の魚の代表であったサンマが食卓から遠のいた。

 不漁の原因は、資源量の減少が大きい。それとともに海水温が上昇し、サンマの群れが日本近海に来遊する時期が遅れる傾向にあること、さらに日本近海への来遊前に中台が公海で大量に先取りしていることが原因となっているとみられる。

 合意した漁獲上限のうち、中国、台湾が主な漁場とする公海では、20年に33万㌧だったのを19万8000㌧、日本とロシアの沿岸では22万6250㌧を13万5750㌧に削減する。この漁獲枠は22年にも適用される。

 NPFCは日中台や韓国、ロシアなど計8カ国・地域が加盟している。各国・地域が参加した科学委員会は今年1月、「サンマの資源量が悪化している」との見解で一致しており、前年比4割減という漁獲量上限の大幅な削減につながった。

 しかし、日本が目指している公海での国・地域別枠の設定は合意に至らなかった。こうした枠の設定がなければ、公海のサンマ漁では早い者勝ちの状態が続く。十分に育たない段階での早獲り競争は、経営的にも望ましいものではない。中台による乱獲を終わらせるには、枠の設定が不可欠である。

 遠い公海まで出ての操業は、経営効率的にもよくないし、何より燃料をたくさん使うため、二酸化炭素(CO2)の排出増につながる。温暖化の抑制という目標にも逆行する。日本は、こうした点を参加国や国際世論に訴えて、国・地域別枠の設定に努めていくべきだ。

 また、年間の漁獲量制限である程度資源量や水揚げ量が回復した場合でも、それを中台が枠の設定を不必要と主張する根拠とさせてはならないだろう。長期的観点から、サンマの資源回復への国際的な取り組みを続けていく必要がある。

 一方、不漁が続くサンマとは対照的に、同じく庶民的な青魚の代表であるマイワシ漁は好調だ。青魚はドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)など、血液中のコレステロールや中性脂肪を減少させ、健康増進に有効な必須脂肪酸を豊富に含む点でも注目されているが、マイワシはその代表格だ。

イワシなどで代替も

 サンマ独特の味覚は他の魚に代え難いものがある。しかし不漁で高値の時は、イワシなどで代替するのも悪くない。四方を海に囲まれ、水産資源に恵まれた日本の利点を生かしていく工夫も重要だ。