JR北海道は体質改善できねば再生はない


 レールデータの改竄(かいぜん)など不祥事が相次ぐJR北海道に対し、国土交通省は鉄道事業法に基づく事業改善命令とJR会社法に基づく監督命令を出した。監督命令は国鉄分割民営化でJRが発足して以来初めてとなる。

 命令を実行し、安全軽視と事なかれ主義の体質を改善しなければJR北海道に未来はない。鉄道事業の原点に立ち返り、信頼と鉄道マンの誇りを取り戻すことができるか。経営のトップから現場の第一線までその責任が問われている。

 データ改竄に組織的関与

 JR北海道は、昨年9月に起きた脱線事故のデータを事故直後に書き換えた社員2人を懲戒解雇、上司ら3人を諭旨解雇するなど75人を処分した。また同社が調査した結果、社内44カ所の保線現場担当部署の4分の3に当たる33カ所で改竄が行われていたことが明らかとなった。驚くべき職業倫理の欠如だ。

国交省は「企業体質、組織文化を含めて構造的な改革が必要」とし、安全部門トップの「安全統括管理者」の解任を要求。対策の実行をチェックする第三者委員会の設置や社員教育体制の再構築などを命じた。また、今後5年間、約50人で監査体制を取り、命令が実行されているか確認を続ける。

 国交省は昨年秋から実施してきた特別保安監査をもとに「JR北海道の再生へ」と題した報告書をまとめた。それによると、現場の第一線から本社に至るまで安全意識が欠落していた深刻な状況が浮き彫りとなった。

 同報告書では、改竄を管理職が指示、黙認するなど組織的な関与を認めるばかりでなく、それが前任者から引き継がれ慣例化していたことも明らかにしている。

 こういう驚くべき体質が、なぜ生まれ放置されてきたのか。JR北海道では労働組合が強い影響力を持っていることと無関係とは考えられない。それに経営の困難が加わって、信じ難い責任感の欠如となったのではないか。

 JR北海道は、昨年9月に特急の自動列車停止装置(ATS)をハンマーで壊し、15日間の出勤停止処分を受けた運転士を告訴する方針も明らかにしたが、あまりに遅い決定である。このような悪質な行為を告訴することをためらった理由にも「事なかれ主義」とその背景の労組問題があったのではないかとの疑いが出てくる。

 社員教育の徹底は平成23年に起きた特急脱線火災事故の際も打ち出されているが、今度こそ鉄道マンの原点についてきちんと教育すべきだ。

 労組問題と正面から取り組んでこなかった経営陣の責任も重い。今後、体質が改善されなければ、この問題にも踏み込み、経営陣の刷新も必要になってくるだろう。

 安全な鉄道づくりを

 事業改善命令と監督命令を受けて、JR北海道の小山俊幸常務は記者会見で「これが最後のタイミングだというぐらいの気構えで会社の再生に当たる」と述べた。「安全な鉄道づくりに取り組むことが使命」と、留任の意向を示した野島誠社長をはじめ、その言葉通りに実行してもらいたい。

(1月26日付社説)