国連人権理 強権国家排除の改革進めよ
国連総会は、国連人権理事会(理事国47カ国)のうち12月末に任期が切れる15理事国の改選選挙を行い、中国やロシア、キューバなどを選出した。
こうした人権軽視の国々が、国際社会の人権状況改善を図る組織の理事国になることは到底理解できない。選出基準の厳格化などの改革が不可欠だ。
中露などが理事国に
中国はチベット、新疆ウイグル、内モンゴルの各自治区で少数民族を弾圧し、独自の文化を抹殺する同化政策を推し進めている。6月には香港国家安全維持法(国安法)を成立させ、国際公約である香港の一国二制度を骨抜きにして統制強化に乗り出した。
ロシアでは8月、反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が旧ソ連の軍用神経剤「ノビチョク」系毒物を投与される事件が起きた。当局の関与が疑われており、ロシアも人権尊重の姿勢には程遠い。
理事国の改選選挙に先立ち、4月には特定国の人権状況の調査を担う特別報告者を選出する委員の一人に中国人外交官が就任するなど、中国は人権理で影響力を強めている。自国の人権弾圧に対する国際社会の批判を抑え込む狙いだろう。
今回の選出結果を受け、2018年に人権理離脱を表明した米国のポンペオ国務長官は「忌まわしき人権状況にある国々が再び選出された」との声明を発表した。当然の指摘である。
人権理は、日本が北朝鮮の拉致問題を追及するなど、各国政府による人権侵害を監視する場となっている。12年10月には、人権理の「普遍的・定期的審査(UPR)」の日本作業部会開催に合わせ、世界基督教統一神霊協会(統一教会、現世界平和統一家庭連合)やエホバの証人など新宗教の拉致監禁問題についてのサイドイベントが行われた。だが人権抑圧を強化する中露のような国家が理事国になれば、機能不全に陥りかねない。
国連の活動を監視する非政府組織(NGO)などは、理事国候補となった中露など計6カ国について「放火犯を消防団員にするようなものだ」として「不適格」だとする報告書を国連に提出していた。
人権状況改善には、真の消防団員を選び出す仕組みが必要である。強権国家を理事国候補から排除するための選出基準厳格化を進めるべきだ。
中露は国連安全保障理事会でも、拒否権を持つ常任理事国を務めている。国際法を無視して南シナ海の軍事拠点化を進める中国や、ウクライナ南部クリミア半島を併合したロシアに、世界の平和と安全の維持を目的とする安保理の常任理事国の資格はないはずだ。それにもかかわらず改革は進まず、中露は特権的な地位を維持している。
民主主義国家が主導を
国連は創設75年を迎えた。だが、こうした現状では心から祝賀することはできない。「多国間主義」の美名の下で中露のような国々が影響力を強めることは阻止する必要がある。このためには、自由、基本的人権の尊重、法の支配などの普遍的価値を共有する日米など民主主義国家が、人権理や安保理をはじめとする国連改革を主導すべきだ。