尖閣諸島 危機打開へ毅然とした対応を


 沖縄県・尖閣諸島周辺の接続水域で、中国海警船の航行が確認された日数が連続100日を超えた。
 尖閣奪取に向けた動きを強める中国に対し、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態など、あらゆる事態に備えた体制の整備が不可欠だ。

海洋進出加速を狙う中国

 中国海警船はきのうも尖閣周辺で確認され、105日連続となった。2012年9月の尖閣国有化以降で、最長の連続日数を更新した。

 日本や同盟国の米国が新型コロナウイルスの感染拡大への対応に追われる中、中国は一方的に領有権を主張する尖閣の奪取に向けて攻勢を強めている。

 単に尖閣周辺を航行するだけではない。領海に侵入し、日本漁船を追尾する事案も相次いでいる。中国は今月初め、尖閣周辺での日本漁船の操業は「領海侵入」だと抗議した。

 尖閣は日本固有の領土だ。中国の抗議は全く事実に反しているが、挑発がエスカレートすれば日本漁船を拿捕(だほ)する可能性も否定できない。また、こうした形で尖閣の領有権をアピールすることで中国の主張を支持する国が現れれば、日本にとっては大きな痛手となる。中国の情報戦に対する注意も求められる。

 20年版防衛白書では、尖閣周辺の中国海警船の動きを「一方的な現状変更の試みを執拗に継続している」と厳しく批判。中国海警局が組織面でも海軍の支援を受け、軍艦艇並みの武器を備えていることなどを挙げて強い警戒感を示した。

 しかし現在の法制度では、軍艦同士の小競り合いのレベルで行使する「平時の自衛権」を自衛隊ですら発動できない。これではグレーゾーン事態に対応できず、中国に尖閣を奪われかねない。実効性ある対策を講じるための法整備を進めるべきだ。

 中国が尖閣を奪おうとするのは、中国が他国を寄せ付けない軍事戦略上の「第1列島線」のすぐそばに尖閣があるからだ。第1列島線は沖縄から台湾、フィリピンを結ぶラインだが、太平洋に出入りするルートに近い尖閣を占拠することで、海洋進出加速のための拠点を築こうとしているとみていい。

 尖閣を守るには実効支配の強化も欠かせない。公務員の常駐をはじめ、灯台や観測所の設置などを急ぐ必要がある。中国を刺激することを恐れる向きがあるかもしれないが、現在の尖閣の危機的状況を打開するために毅然(きぜん)とした対応をすべきだ。

 ポンペオ米国務長官は今月、中国による尖閣周辺での領海侵入や南シナ海への進出などを挙げて「中国は領土紛争をあおっている。世界はこのいじめを許すべきではない」と述べ、世界各国が一致して対抗する必要があると訴えた。

民主主義国は連携強化を

 共産党一党独裁体制を堅持する中国は、国際ルールや地域の秩序を無視して覇権主義的な動きを強めている。

 自由、基本的人権の尊重、法の支配などの普遍的価値を共有する日本や米国などの民主主義国家は、中国と対峙(たいじ)するために連携を強化すべきだ。日本にとっては、それが尖閣を守ることにもつながるだろう。