海の日 海洋国自覚し現状直視を


 四方を海に囲まれた日本は、海からの恩恵を受け発展してきた海洋国家である。きょうは「海の日」。その恩恵に感謝し、海洋国家の自覚を新たにするとともに、海をめぐるさまざまな問題を考える日としたい。

挑発強める中国公船

 夏のレジャーシーズンと重なるこの祝日は、毎年多くの人々が海に繰り出す。今年は新型コロナウイルスの感染拡大が大きなブレーキとなっているが、それでも訪れる人々に大きな癒やしを与えてくれるだろう。

 海の恩恵は、水産資源、通商貿易など日本人の生存に欠かせない。軍事面では天然の防壁の役割を果たし、外交ではわが国と世界を結び付けてきた。しかし、日ごろから海に関心を持つ人は多くない。

 日本人は世界一の魚食国民であり、魚はユネスコ無形文化遺産に登録された和食に欠かせない。それだけ恩恵を受けている日本人が、水産資源がいま枯渇しつつあり、海洋環境がどういう状態にあるかということに十分な関心を払っていないのは恥ずかしいことだ。

 海は陸上での人間の活動で排出された厄介なものの多くを受け入れてきた。しかし、その包容力は無限ではない。汚染などの海洋の劣化は極めて深刻な段階にきている。

 近年、日本列島でも雨の降り方が変わり、豪雨被害が毎年のように発生する背景には、陸上で化石燃料を燃やし続けてきた結果、海の水温が上昇し酸性化が進んだことがある。

 世界的な問題となっている海洋プラスチックごみは、陸での人間の行為の代償を海が払っていることの象徴となっている。昨年、大阪で開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、新たな汚染を2050年までにゼロとすることが採択された。その対策としてのレジ袋有料化は、われわれの生活が海の汚染問題に直接つながっていることに人々の眼(め)を向けさせるきっかけとなった。

 安倍晋三首相は海の日を前にしたメッセージで、深刻化している海洋プラごみについて「世界に冠たる海洋国家として、世界的な重要課題の解決に向けて、リーダーシップを発揮していく」との決意を述べている。また「『海を守る』ためには、各国との協力も重要。自由で、開かれた、安全な海を確保する『総合的な海洋の安全保障』に取り組んでいく」との考えを示した。

 沖縄県・尖閣諸島の周辺海域への侵入を繰り返す中国を念頭に置いたものとみられる。侵入は22日の段階でこれまで最長の100日連続に及んでいる。また最近は、沖ノ鳥島(東京都小笠原村)沖の排他的経済水域(EEZ)内でわが国に無断で海洋調査を行うなど、主権侵害と挑発行為をエスカレートさせている。中国船排除のための断固たる外交的な対応と、海上保安庁を中心とした態勢の強化が急務である。

問題解決へ強力な体制を

 日本が海洋問題の解決にリーダーシップを果たしていくためにも、政府はもっと強力な体制づくりを考えるべきである。また、海洋国家としての自覚を国民がもっと強めるための働き掛けも必要だ。