拡大する中露ミサイルの脅威、極超音速兵器の開発進む
米国防総省と軍の高官が、中国、ロシアなどからの極超音速兵器などのミサイルの脅威が高まっていると警鐘を鳴らした。
ルード政策担当国防次官は、下院軍事委員会の戦略軍に関する小委員会の公聴会で、新型ミサイルによる脅威が高まっていると訴えた。
ルード氏は、間もなく公表される国防総省のミサイル防衛の中長期戦略「弾道ミサイル防衛見直し」(BMDR)と、ミサイルの脅威に対抗するための多層的なミサイル防衛網に関するトランプ政権の計画について検討を進めているとした上で、「米国と同盟国、友好国は、これまでに経験したことのない複雑で不安定な安全保障環境の中にいる」と強調した。
同氏によると、中国、ロシア、北朝鮮、イランなどの敵国は、①既存のミサイル部隊の能力を強化②新しい、かつてないタイプのミサイルを導入③威圧、軍事演習、戦争計画にミサイルを取り入れる――という三つの方法でミサイル戦力を強化しているという。
国防総省は昨年9月、増大する北朝鮮からの脅威に備えるためにミサイル防衛予算を4億㌦増額した。現在、アラスカ州とカリフォルニア州に配備されている44基の迎撃ミサイルに追加する20基のミサイルの製造に充てられる。
2019年度予算では、ミサイル防衛に129億㌦を要求している。アラスカ州の地上配備型迎撃ミサイル(GBI)用の新型弾頭、新型ミサイル、追尾センサーと、新たな宇宙配備迎撃評価(SKA)システムの開発に充てる予定だ。
SKAは、商業衛星に搭載した小型センサーのネットワークで、迎撃ミサイルと敵ミサイルの破壊状況に関する情報を収集するためのもの。このシステムによって、必要な迎撃ミサイルの数を減らすことができるという。
ルード氏は、「潜在敵がミサイル攻撃能力を近代化、強化しているのは明らかだ。ミサイル防衛投資の戦略と優先順位を決定し、現在最も危険なミサイルの脅威に対抗できるようにしなければならない」と早急な対応の必要性を訴えた。
ミサイル防衛局のグリーブズ局長(空軍中将)も、ミサイルの脅威は急速に強まっており、対抗するためにミサイル防衛を強化する必要があると訴えた。
グリーブズ氏は、①迎撃システムの信頼性を高めること②ミサイルを追跡、迎撃する高性能センサーを搭載した迎撃ミサイルの数を増やすこと③指向性エネルギー兵器など「形勢を一変させる可能性のある」兵器を使って、極超音速滑空飛翔体と極超音速巡航ミサイルのような新たな脅威に対抗できるようにしておくこと――という三つの優先事項について強調。
最大の脅威は極超音速兵器だと主張するとともに、「この分野に投入できる時間とリソースが大幅に増えるものと思っている」と期待を表明した。
同氏によると、中国、ロシアなどは、超音速・極超音速巡航ミサイル、弾道ミサイルの先端に取り付けて発射する極超音速滑空飛翔体など、ミサイル防衛を無力化するためのミサイルを開発している。「高速で飛行し、誘導可能」であるため迎撃が難しく、早急な対応が必要だという。