オール沖縄・高良氏と自公維態勢・安里氏の一騎打ち

参院選まであと2ヵ月、単純な「保革対立」からの脱却なるか

 7月に予定されている参議院選挙まで残り約2カ月と迫ってきた。沖縄選挙区(改選1)では、「オール沖縄」勢力が支援する琉球大法科大学院名誉教授で憲法学者の高良鉄美氏(65)と自民党公認の元日本青年会議所(JC)会頭でシンバホールディングス会長の安里繁信氏(49)による事実上の一騎打ちとなる見通しだ。(沖縄支局・豊田 剛)

辺野古移設は憲法違反 高良鉄美候補

魅力ある沖縄をデザイン 安里繁信候補

オール沖縄・高良氏と自公維態勢・安里氏の一騎打ち

辺野古移設反対を訴える高良鉄美氏=7日、那覇市の沖縄教育福祉会館

 4月21日に投開票された衆院沖縄3区補選では、玉城デニー知事を支える革新系「オール沖縄」陣営の推す屋良朝博氏が初当選を果たした。その余韻に浸る間もなく、7月21日に予定されている参議院選に向けて動きが慌ただしくなっている。

 オール沖縄陣営は、候補者選びで難航したが、高良鉄美名誉教授を擁立することで落ち着いた。沖縄地域政党である沖縄社会大衆党(社大)の糸数慶子氏(71)は勇退することとなったが、4選に意欲を示していた。そのため、高良氏擁立を決めた社大内で不協和音が生じた。

 糸数氏の支援者や政党色の排除を望む一部革新系市民らは3月、選考過程が不透明だとして選考の見直しを求めていた。呼び掛け人159人の中には「オール沖縄」の中心的人物である金秀グループの呉屋守将会長、「辺野古」県民投票の会の元山仁士郎代表らも含まれていた。

 ある革新系県議は、「政党間のバランス調整もある。参院のポストは社大が既定路線」だと強調した。衆院は1区で共産、2区は社民の公認候補がおり、3区補選で玉城知事に近い自由党系の屋良氏が当選した。

 7日に那覇市で開かれた出馬会見では糸数氏が高良氏と固い握手を交わし、和解を強調した。ただ、ある経済人が「肝心の呉屋さんがいない」と漏らすなど、一枚岩と言える状況にはない。

 「糸数さんから県民が一致して団結して取り組むためにバトンタッチした。この意味は重い。単なる平和の一議席ではない」
 出馬会見でこう述べた憲法学者の高良氏は、琉球大教授時代から辺野古移設の反対運動に積極的に参加している。辺野古移設については、「(普天間飛行場の)閉鎖・撤去と辺野古埋め立て工事反対の両方を訴えていきたい」と強調。また、民意を無視した辺野古移設は憲法違反」と持論を展開した上で、「憲法9条の改正に強く反対する。憲法改正を国会で追求したい」と訴えた。高良氏の発言の大半は基地と憲法に関するものだった。

オール沖縄・高良氏と自公維態勢・安里氏の一騎打ち

沖縄の将来像について語る安里繁信氏=11日、那覇市のハーバービューホテル

 これに対し安里氏は11日、公明党と政策協定を終えた後、出馬会見し、再来年度末に期限を迎える沖縄振興計画の策定を最大争点に、経済振興を進める考えを示した。政治力を生かして観光地としての沖縄経済を伸ばし、「子供たちの世代がワクワクドキドキする魅力ある沖縄をデザインしたい」と強調。「より現実的に現状と未来を描きたい」と抱負を述べた。

 近く維新も推薦を決定する見通しで、昨年2月の名護市長選などで奏功した自公維態勢で臨むことになる。

 沖縄の国政選挙は沖縄県が1972年に本土復帰して以来、保革対立に終始している。安里氏は、「右左(保革)の対立ばかりではなく、真ん中でしらけている層があるのであれば、働き掛けたい」と述べ、無党派層の取り込みを重要課題に据えることを確認した。

 稲嶺恵一元知事は、「国との対立、オールオアナッシングではなく、ぎりぎりの選択、すなわちベターな選択が必要になる」と述べ、安里氏の現実的な問題解決能力に強い期待を示した。

 公明党沖縄県本部の金城勉代表(県議)は3区補選の演説中に、「オール沖縄の国会議員は多くいるが、沖縄のために仕事をしているのだろうか」と主張。「辺野古移設反対の議員1人だけで十分ではないか」と皮肉たっぷりに話し、県選出の革新系国会議員の仕事ぶりを検証する必要性に言及した。

 オール沖縄陣営は、辺野古移設反対の民意を追い風に、昨年9月の知事選以来、那覇市長選、衆院3区補選など主要選挙で連勝している。参院選に限定すれば3連勝中だ。

 一方、安里氏にはJCや企業の人脈がある。若い世代に支持されている強みを生かして、これまでの単純な保革対立を超えた戦いに持ち込めるかが勝敗の分かれ目になりそうだ。