辺野古移設、県民投票の全県実施困難
6市議会が拒否、3分の1不参加も
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設に伴う名護市辺野古の埋め立ての賛否を問う県民投票を来年2月24日に控えているが、宮古島と宜野湾の両市が投開票事務の協力を拒否しているため、全県での実施が危うくなっている。
12月に入って各市町村議会は県民投票関連経費を盛り込んだ補正予算の採決を終えた。そのうち、34市町村議会で予算案が可決され、県民投票の実施が確定している。議会で同案が否決された与那国町は町長判断で実施を決めた。
一方、宮古島、宜野湾、沖縄、石垣、うるま、糸満の6市議会は予算案を否決した。そのうち、宮古島と宜野湾は、市長が「議会の判断を尊重する」として県民投票を実施しないことを決めた。6市には県全体の35%に当たる約41万人の有権者がおり、最大で県民の3人に1人が参加できないことになる。
宜野湾市の松川正則市長が問題視したのは、辺野古移設を含めた米軍再編の原点となっている普天間飛行場の移設および危険性除去について明記されていないことだ。さらに、政治的中立性についても疑念を抱き、「県公室長に懸念を申し上げたが、知事は直接辺野古に出向いている。非常に憤慨している状況だ」と述べた。
また、県議会の自民と公明の両会派は、「辺野古賛成か反対かという単純な2択では民意は測れない」とし、「やむを得ない」と「どちらとも言えない」を含めた4択とするよう求めたが、玉城デニー知事を支える革新系県政与党が拒否した。
県民投票条例第11条には、「知事は県民が賛否を判断する為に必要な広報活動を行うとともに情報の提供に努めなければならない」とあり、2項は「前項の広報活動及び情報の提供は客観的かつ中立的に行うものとする」とある。土砂投入が行われた翌日の12月15日、玉城知事がキャンプ・シュワブのゲート前で反基地活動家らを鼓舞した言動は県民投票条例に違反しているというのが松川市長の認識だ。
県民投票を実施しない自治体に対し、県は「是正勧告」や「是正要求」などで実施の要請をすることができるが、これを拒否しても罰則規定はない。
謝花喜一郎副知事は27日、宜野湾市の松川市長を訪れ、県民投票を実施するよう文書で勧告し、1月7日までの回答を求めた。県民投票を拒否する市に対し、実施の勧告や是正要求を行う方針。
沖縄、石垣、うるま、糸満の4市長の最終判断は1月8日まで持ち越される見通し。宜野湾をはじめ予算案を否決した市の反発は根強く、県は翻意させられるかは見通せない。県民投票をテコに、普天間飛行場の辺野古移設を阻止したい玉城デニー知事にとって、正念場と言えそうだ。
古謝景春前南城市長は、「県と市町村の関係は対等であるべきだ。市町村に強要を迫る県のやり方は地方分権、地域主権を否定するもの」と批判する。また、辺野古区の意思決定機関である行政委員会は県民投票に反対する意見書案を全会一致で決議した。辺野古商工社交業組合の飯田昭弘元会長は、「辺野古沿岸に埋め立て用の土砂投入が始まり、本気で工事を止められると思っている人はいない」と指摘。「議論すべきは辺野古の振興策をどうするかだ」と話した。
(那覇支局・豊田 剛)