衆院選沖縄4区 翁長知事派の仲里氏落選

「オール沖縄」の一角崩れる

 衆院選が22日、投開票され、沖縄選挙区では米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設阻止を掲げる革新系「オール沖縄」の前職3人が当選したが、無所属前職が議席を失い、翁長雄志知事にとって痛手となった。(那覇支局・豊田 剛)

西銘氏「知事との戦い」制す/宮古、与那国で自民が圧倒

衆院選沖縄4区 翁長知事派の仲里氏落選

当確が出て万歳三唱する西銘恒三郎氏(中央)=23日午前1時半、沖縄県南風原町の選挙事務所

 23日午前1時半、4区は自民前職の西銘恒三郎氏(63)=公明推薦=の5期目の当選が確定、無所属前職の仲里利信氏(80)から「選挙区奪還」を果たした。

 2014年の衆院選と同様、自公政権と革新系オール沖縄勢力が対決する構図となった。前回は県知事選の直後の強い追い風を受けて、知事派候補が全員、選挙区で当選したが、今回はその一角がついに崩れた。

 普天間飛行場の辺野古移設で日米両政府が合意した06年以降、辺野古移設推進の立場で当選したのは、沖縄県内では知事選や関係自治体の市長選、国政選挙を含めて初めてのこととなる。

 西銘氏の勝利を決定付けたのは離島地区の動向だった。陸上自衛隊配備が決まっている宮古島で大差で勝利し、1年半前に陸自が配備された与那国島でも圧倒した。安全保障に対する危機意識の高さを示した結果となった。

 それ以外でも、沖縄本島南部地区で得票が軒並み伸びた。西銘氏は、「選挙区の市町村長全員が一緒に戦ってくれた。県知事との戦いといった感じだった」と振り返り、自公連立体制でしっかり政治をしていきたいと抱負を述べた。

 一方で、翁長氏が最も期待していた仲里氏の落選は、オール沖縄陣営にとって痛手だ。

衆院選沖縄4区 翁長知事派の仲里氏落選

比例で復活当選を果たし、支援者と万歳三唱する国場幸之助氏(左から3人目)=23日午後1時、沖縄県那覇市の選挙事務所

 仲里氏は、翁長氏と同様に辺野古移設反対をきっかけに自民を離れ、オール沖縄の流れをつくった人物だ。翁長氏は出陣式と総決起大会に参加、何度も遊説に訪れるなど、最もテコ入れした候補だった。オール沖縄は、元自民系が敗れたことで、革新色がさらに強まることが確実だ。

 自民党にとっても、1、2、3区で知事派候補に敗れたのは痛いところ。公示の翌日に、沖縄県東村の民間地に米軍普天間飛行場(宜野湾市)所属のCH53E大型輸送ヘリの炎上事故が影響したことは否めない。具志孝助元自民党沖縄県連会長は、「各候補とも、事故後の調査で支持率が下がった」と影響を指摘。「選挙区での敗北は予想していなかった」と話した。基地問題が有権者の最大の判断材料となったことについて、基地負担軽減を十分に実感させることができなかったのは、自民党や政府の責任でもある」と、結果を厳粛に受け止めた。

 前回に続き、全国の選挙区で唯一、共産党公認候補の勝利を許した自民の国場幸之助氏(44)=公明推薦=は約54000票を獲得し比例復活を果たしたが、「復活当選できたうれしさよりも、票が伸び悩んだ悔しさの方が大きい」と話した。「3年前の衆院選のような逆風はなく、無風だった。それにもかかわらず約6万票がオール沖縄票に行ってしまったという事実を重く受け止めないといけない」と危機感を示した。

 争点となった普天間飛行場の辺野古移設については「県民から厳しい意見があった」と述べる一方で、普天間飛行場の危険性をどのように除去するのか、(オール沖縄は)説明しないといけない」と指摘した。

 翁長政俊・選対本部長は、「オール沖縄を牽引(けんいん)した那覇市議会の元自民系会派『新風会』が消滅したこともあり、オール沖縄の勢いは弱まった」と語った。

 自民党の4候補とも無党派層の得票が伸び悩んだことについて、「今後の課題としては、無党派層に県民が思っている基地の整理縮小、負担軽減をどのように自民党の立場でしっかり伝えていくのか、考え直さなければいけない」と強調。その上で、「米軍への要請は与党でなければできない。オール沖縄のようにスローガンだけで反対する時代ではない」と述べた。

 これに対し、翁長氏は普天間飛行場を抱える2区、名護市を含む3区で圧勝したことで、『辺野古新基地』反対、オスプレイ配備撤回、普天間飛行場の撤去を訴えたことが大きかった」と述べ、成果を強調した。安倍晋三首相が「国難突破解散」と名付けた一因となった北朝鮮による核・ミサイル問題、さらに中国の脅威は、沖縄に直結する問題にもかかわらず、争点にならなかった。

 総じて、自公連立とオール沖縄陣営の双方にとって痛み分けとなった。年明け早々、名護市長選が実施される。自民党県連幹部は「ローカル選挙は地域の事情があるため、衆院選の結果は直結しない」と強気だが、来年11月に予定されている県知事選に向けて見通しは決して明るくない。