仲井真知事、「県外」要求のまま埋立承認も

自民県連が「辺野古」容認

公明県本部は「県外」堅持

 県選出の自民党の国会議員5人全員が米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先について名護市辺野古を選択肢として容認したことに続いて、自民党沖縄県連も「県外」の公約を撤回して辺野古を容認。党本部との政策のねじれは解消した。しかし仲井真弘多(ひろかず)知事は辺野古移設および埋め立て申請承認について慎重な姿勢を崩さない。来年1月19日に投開票が予定されている名護市長選前に知事が埋め立て申請を承認するかどうかが注目される。

(那覇支局・豊田 剛)

仲井真知事、「県外」要求のまま埋立承認も

代表質問する照屋守之議員(前列左)。メモをとる仲井真弘多知事(同中央)=4日、沖縄県議会

 翁長政俊県連会長が1日、那覇市で開かれた自民党沖縄県連総務会で辞任を表明した。普天間飛行場の移設先を「県外」とする公約を撤回したことの責任を取った形だ。自民党県連内に混乱が収まらない中、県議会11月定例会の代表質問が12月4日、始まった。

 代表質問の一番手として質問台に立った自民党県連幹事長の照屋守之議員は冒頭、県連が普天間飛行場の移設先について「県外」から「辺野古容認」へと方針転換したことを説明。「固定化阻止のためやむを得ず、県内移設を認めたことを深くおわびする」と謝罪した。

 照屋議員から、普天間飛行場の辺野古移設に向けた埋め立て承認の可否について質問された仲井真知事は、「現在、(埋め立て申請の)内容について審査が継続している。承認するか否かの判断時期は早くとも今月末以降になる」と述べた。

 一方、仲井真知事は5日、野党議員の質問に対し、「日米両政府に普天間の県外移設、早期返還の実現を強く求めていく」と述べ、移設先について従来の方針を堅持した。

 「埋め立てを不承認すべきだ」との要求に対して、「機能の一部であれ、暫定的であれ、県外への移設を盛り込まないと現実的にはならない」と、埋め立てを承認した場合でも「県外」を主張する可能性を示唆した。仲井真知事は11月1日の定例記者会見では「承認する、承認しない、そしてその中間もありましょう」と述べるなど、埋め立て承認に柔軟な姿勢を示すようになった。

 4日の代表質問で具志孝助議員は「知事には、わが党の政策をご明察の上、賢明なご判断を要望する」と述べ、埋め立てを承認するよう念を押した。

 知事が埋め立て承認に踏み切れないのは、「与党が過半数を割っていて、野党が不信任案を提出する可能性もある」(自民党県連)からとの見方がある。また、連立パートナーの公明党への配慮もうかがわれる。

 公明党県本部は、「県外」の公約を堅持する姿勢を崩さない。県本部幹事長の金城勉県議は自身のフェイスブックで政府が県政界に辺野古容認を迫る手法を「琉球処分」と批判している。1879年の明治政府による琉球王国の解体・併合になぞらえた。一方、山口那津男党代表は、辺野古移設の日米合意を推し進めるべきだと主張。党本部と県本部の間でねじれが生じている。


固定化避けるためやむを得ず決断

照屋幹事長が議会で釈明

 自民党沖縄県連幹事長の照屋守之議員は代表質問の冒頭、県連が辺野古容認に転じたことについて説明、公約を破ったことについて謝罪した。以下は、発言の要旨。

 自民党沖縄県連は、普天間飛行場の問題について、参院選挙の公約などに①危険性除去②早期返還③県外移設を求める④固定化阻止――を掲げ、県民に示した。

 12月1日の総務会では、米軍基地の固定化阻止と早期返還のためには「辺野古に移すことを含むあらゆる選択肢を排除しない」という方針に変更した。継続使用や固定化が危惧される中、危険性除去のためにはあらゆる手段を講じなければならない。

 県連はこれまで、県外移設を求める方向で、党本部、政府や官房長官、防衛省などに基地負担を訴えた。さらに全国の基地視察などを通して県外移設先を調査。調査結果を日米協議のテーブルに載せようと取り組んできた。

 ところが、県連が求めてきた県外移設について両政府が協議するに至っていないのが現実。普天間飛行場の移設・返還は、日米両政府の権限、意思決定のみにより解決するもの。

 政府から辺野古埋め立て申請可否の判断が迫り、辺野古案以外に解決の道はなく、このまま県外を求めれば固定化にもつながるという厳しい局面にある。同時に嘉手納基地以南の米軍施設返還に大きく影響する。

 県議会議員が議論した結果、やむを得ず、固定化阻止のため辺野古移設を容認せざるを得ないという結論に至り、全会一致で確認した。

 平成8年の日米両政府の返還合意から17年間がたち、3代の県知事が取り組んできた難題。県連も大きな責任を感じている。国政の政権政党、そして県政与党として現実的に対応する。厳しい批判は覚悟しているが、問題に対して責任を果たしていく。知事には解決の道筋を付けていただくようお願いする。