国連人権理事会での翁長沖縄県知事の発言に政府ら反論

我那覇さん「沖縄県民は先住民ではない」

 翁長(おなが)雄志(たけし)知事は21日午後(日本時間同日深夜)、スイス・ジュネーブで開かれた国連人権理事会で発言し、沖縄が基地問題で「人権侵害され、差別されている」と訴えた。これに対し、名護市在住の我那覇(がなは)真子(まさこ)さん(26)は、知事の「プロパガンダ」を信じないよう注意を促した。駐ジュネーブの日本政府代表からも反論があり、沖縄には多様な民意が存在することが証明される形となった。(那覇支局・豊田 剛)

国連人権理事会での翁長沖縄県知事の発言に政府ら反論

国連人権理事会で発言する我那覇真子氏=22日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で(砥板芳行氏提供)

 翁長知事は国連NGOの市民外交センターの枠を使って2分間、英語で発言した。その中で、「沖縄の人々は自己決定権や人権をないがしろにされている。(中略)あらゆる手段で新基地建設を止める覚悟だ」と主張した。

 これに対し、ジュネーブ国際機関政府代表部の嘉治美佐子大使が反論の機会を求め、「日本政府は米政府と共に沖縄の負担軽減に努めている。経済振興にも力を注いでいる」とし、「日本の平和と安全を確保することが何より重要だ」と訴えた。

 さらに、「琉球新報と沖縄タイムスを正す県民・国民の会」の代表を務める我那覇真子さんは翌日の理事会で、「沖縄の人々が抑圧された少数派というのは事実と懸け離れている」と指摘した上で、「沖縄県民は先住民ではない。どうかプロパガンダを信じないでください」と悲痛な訴えをした。締めくくりに、「東シナ海および南シナ海において中国が引き起こしている深刻な問題を認識すべきだ」という石垣市の砥板(といた)芳行(よしゆき)市議会議員(45)の言葉を引用した。

 同行した砥板氏は「国連人権理事会の場で知事に反論できたことは意義がある」と一定の評価を下した。翁長知事の発言については、「国連人権理事会として最重要課題であるシリア難民問題やクリミア半島問題、アフリカの貧困飢餓などがある中で、いきなり『沖縄県民は先住民族で、基地問題で人権侵害されている』という虚構をつくり上げ、政治アピールのために理事会を利用した行動は恥ずべきこと」と断罪。普天間飛行場の移設問題は本来、日米間または国内で解決すべき安全保障体制の問題であって、人権理事会にはなじまないとの見方を示した。

 翁長知事はまた、演説に先立ち、移設反対派の市民団体が主催したシンポジウム「沖縄の軍事化と人権侵害」で演説した。基地が「米軍に強制接収されてできた」と事実と異なる見解を述べた。参加した人の話によると、シンポジウムに参加した国連関係者はほとんどおらず、その場にいた大半は県内メディアだったという。翁長知事はその場で、沖縄県民が日本の先住民族であるかのごとく振る舞っていたという。

 翁長氏は人権理事会で約90人いた発言者の一人にすぎないにもかかわらず、約30人ものマスコミが翁長氏を取り囲んでいた。

 砥板氏は、「翁長知事は国際社会に訴えるのが目的ではなく、主に県内向けのパフォーマンスだった。国連に招かれたのではなく、一定の政治的思惑を持ったNGOに枠を貸してもらって参加した。にもかかわらず公費・公務でジュネーブに行っているのが問題」と指摘。30日から始まる県議会代表質問および一般質問で翁長知事の言動が追及されることは必至だ。


我那覇真子さんの演説全文

 昨日、沖縄は紛れもない日本の一部であるにもかかわらず、「沖縄県民は日本政府および米軍から抑圧される被差別少数民族である」という話を聞いたと思います。それはまったくの見当違いです。

私は、沖縄で生まれ育ちましたが、日本の一部として私たちは世界最高水準の人権と質の高い教育、福祉、医療、生活を享受しています。人権問題全般もそうですが、日本とその地域への安全保障に対する脅威である中国が、選挙で選ばれた公人やその支援者に「自分たちは先住少数民族である」と述べさせ沖縄の独立運動を扇動しているのです。

我々沖縄県民は先住少数民族ではありません。

どうかプロパガンダ(政治宣伝)を信じないでください。

石垣市議会議員の砥板芳行氏からのメッセージを預かっています。

「沖縄県の現知事は無責任にも日本とアジア太平洋地域の安全保障におけるアメリカ軍基地の役割を無視しています。翁長知事はこの状況をねじ曲げて伝えています。中国が東シナ海と南シナ海で見せている深刻な挑戦行為を知事と国連の皆様が認識をすることが重要です」

 ありがとうございます。


国連勧告の取り下げが急務

中国工作に詳しいジャーナリスト・仲村覚氏

国連人権理事会での翁長沖縄県知事の発言に政府ら反論

 左翼陣営から見れば、国連の場でアピールできたという点ではうまくいった。十数年かけてきた工作の仕上げに成功したことになる。

沖縄県民はまだ、事の重大さに気が付いていない。我那覇さんが反論できたことは評価すべきだが、言葉の重みとしては知事の方が重い。

翁長知事はこれまで何度も沖縄の「自己決定権」を主張する。演説では“self-determination”と言った。ところが、人権委員会では、“self-determination”という単語は「民族自決」を意味することは誰でも分かる。沖縄県民は先住民族であると明言したのと変わらない。

さらに問題なのは、これまで先住民の権利で2008年と2014年の2回、国連が勧告を採決していることだ。これは沖縄県民は日本人ではなく先住民だと勝手に宣告されたようなもので、看過できない。勧告を取り消させる働き掛けが必要だ。

そのために大事なことは、沖縄県民は日本人だと訴えることと、県民の意思とは別に行った国連NGOに対して県民が怒りをぶつけることだ。