那覇市、不透明な管理料を身障者福祉協会に大幅増額
条例で国のサービス事業除外
沖縄県那覇市は同市障害者福祉センターの指定管理者の選定に当たり、2006年度から3年間、指定管理者が申請した金額の約2・8倍の指定管理料を支払っていたことが、議会答弁や関係者の証言でこのほど明らかになった。さらに、06年10月1日施行の那覇市障害者福祉センター条例(センター条例、05年9月30日条例第42号)で「障害福祉サービス事業」が実施できないように改正されたことで、06年度から今年度末までの7年間で約1億2800万円もの不適切な出費があることも明るみに出た。4期目の翁長雄志那覇市長の財政管理のずさんさが浮き彫りになったもので、「これは氷山の一角」との声が上がっている。(那覇支局・豊田 剛)
7年間で1億2800万円不適切支出
議会で不適切な支出が指摘されたのは、障害者の活動支援の促進を目的とした地域活動支援センター事業のⅡ型。地域において雇用・就労が困難な在宅障害者に対し、創造的活動、機能訓練や社会適応訓練、入浴などのサービスを実施するもの。
市は、06年10月1日から指定管理者である社団法人那覇市身体障害者福祉協会(会長、高良幸勇氏)に地域活動支援センターⅡ型事業を事業委託。現在も指定管理が続いている(09年4月1日から14年3月31日)が、NPO福祉法人関係者は「事業委託契約について不透明な部分が多い」と指摘する。ちなみに、同協会の会長は06年以来、翁長市長に近いといわれる高良元市議が務めており、「特別な配慮があるのではないか」(福祉関係者)との臆測が流れている。
NPO法人関係者によると、同協会は06年度の指定管理料を年間287万1000円と申請、那覇市と年度協定書を締結した。ところが、同年度後半期に基本協定書、年度協定書を変更し、06年度予算を263万5000円増額の550万6000円にしたが、その詳細(費用内訳)は不明確であった。
その後も何ら改善されることなく、07年度、08年度の指定管理料は814万円に膨れ上がった。同じセンターの管理料が増額されていった根拠も何ら示されていない。08年度行政監査で、市は適切な指示および監督をすべきだと指摘された。
また、06年10月施行のセンター条例には、障害者自立支援法に規定する「障害福祉サービス事業」が組み入れられなかった。そのため、06年度(10月~翌年3月までの半年間)の指定管理者に市が支払った那覇市地域活動支援センターⅡ型事業の委託料は1670万円、07年度から13年度までは毎年3340万円を支出している。障害福祉サービス事業を条例に含めておけば、3340万円から国庫補助分の900万円を差し引いた額の2440万円の4分の3に相当する1880万円は国と県から補助を受けられていた。
昨年6月の市議会定例会では久高友弘議員がこの問題を指摘。「条例改正によって外さなくていいものを外した。市長以下、責任を考えないといけない」と問い詰めた。那覇市は最近までこの問題を放置しており、7年間で1億2800万円の不適切な支出を計上したことになる。
センター条例は昨年9月28日に改定され、条例第3条2項にセンターの掲げる事業として「障害福祉サービス事業」が追加された(10月1日施行)が、いまだに補助を受けずにいる。「これは行政の不作為以外の何ものでもない」と福祉関係者は憤慨する。
支出疑惑はこれにとどまらない。市は10年度に社団法人那覇市身体障害者福祉協会に支払った指定管理料4154万円のうち、69万円が繰り越された。年度協定書には「その決算の額が委託料に満たさない場合は、その差額を速やかに市に返還しなければならない」と規定されている。繰越金の使い道について議会で質問すると、「協会が作成した収支決算内訳書が間違っていた」と回答。市に提出された決算書には、69万円分を光熱費や施設設備修繕費など4項目で増額されていた。ところが、12年度と13年度の年度協定書に明記されていた返還義務に関する条文が、14年度と15年度の年度協定書では改正手続が行われないまま削除されている。不適切な会計処理を隠蔽(いんぺい)する市の体質がよく出たやり方だ。
市当局者は「もし繰越金が出るようであれば返還を求めていきたいと思っております」と議会で答弁した。しかし、これまで繰越金を返還したという報告はない。
関係者によると、市健康福祉部障がい福祉課の担当者はこれまで何度も病気などを理由で交代している。7年前に始まった那覇市障害福祉センターの指定管理料やⅡ型事業の委託料の問題の実態を把握できる市職員はおらず、責任を取れるのは4期目の長期市政を担う翁長市長以外にない。
「市長が改善命令を出せばすぐにでも解決できるものの、事態を認識しているのにもかかわらず何もしてこなかったのは不作為でしかない」と関係者は指摘。何も改善されないようであれば、法的手段に訴えることも考えている市民団体もあるという。