宜野湾市の佐喜真市長 2期目の出馬表明


基地固定化 早期打開に意欲

評価される都市開発計画/子育て・福祉などでも実績

 普天間飛行場がある宜野湾(ぎのわん)市で、任期満了に伴う同市長選が1月24日に予定されている。保守系で現職の佐喜真(さきま)淳氏(51)は5日、2期目に向けての出馬の意思を明らかにした。昨年11月の沖縄県知事選で普天間飛行場の名護市辺野古沖移設反対で結集した「オール沖縄」の勢力との戦いになることが予想される。(那覇支局・豊田 剛)

野党陣営は人選難航か

宜野湾市の佐喜真市長 2期目の出馬表明

宜野湾市長選への出馬を表明する佐喜真淳氏(中央)=5日、宜野湾市の総合結婚式場ジュビランス

 出馬会見で佐喜真氏は普天間飛行場について、「一日も早い返還実現に向け、全力を尽くす」と強調。「普天間の固定化は絶対にあってはならない」と述べた。

 佐喜真氏は市議と県議を経て2012年2月に初当選。元市長の伊波(いは)洋一氏を僅差で破り、難攻不落と言われていた革新の牙城を27年ぶりに崩した。

 普天間飛行場の名護市辺野古沖への移設をめぐる政府と県による集中協議が9月7日まで1カ月間行われたが、佐喜真氏は当事者として参加を希望したが実現できなかった。

 佐喜真氏の普天間飛行場移設に懸ける思いは強い。19年前の平成8年、日米両政府が普天間飛行場返還に合意した。その際の原点は「危険性除去」と「負担軽減」だった。辺野古移設に向けた作業が進んでいる中、昨年末に知事に就任した翁長(おなが)雄志(たけし)氏は辺野古移設反対を公約に掲げ、今でも強固に反対。移設の原点は「米軍による強制接収」と持論を展開しており、政府との対話は平行線のままだ。

 宜野湾市民の間には、今のままでは固定化は避けられないとの不安が広がっている。そこで、政府との太いパイプを持ち交渉力のある佐喜真氏の続投への期待は高まっている。

 出馬会見に先立ち、佐喜真氏は8月下旬、市議会の自民党会派、市商工会政治連盟など65団体から出馬要請を受けた。基地問題だけでなく、西海岸地区の開発、子育て・福祉拡充、基地跡地利用計画などが支持された。佐喜真氏の後援会によると、5日現在では推薦団体は70を超えているという。

 自民党第2選挙区顧問の安次富(あしとみ)修元衆院議員は、「27年間にわたる革新市政のせいで、宜野湾市は近隣の市町村よりも元気がないと言われたが、佐喜真市政は雰囲気を変えた」と評価。「普天間飛行場の返還を考えると『オール沖縄』は宜野湾市民が望まないもの。全国から革新団体が応援に来るため、否(いや)応なしに日本中が注目する選挙になる」と引き締めた。

 佐喜真氏は就任してすぐ、未就学児の医療費の完全無料化、小学校の給食費の半額助成を実現。渋滞緩和が期待される普天間飛行場フェンス沿いの市道の整備に着手した。

 普天間の危険性除去を誰よりも訴えてきた。空中給油機KC130の岩国飛行場(山口)への移転、さらにはMV22オスプレイの訓練移転を実現させた。また、佐喜真氏が就任して以来、基地所在自治体に配分される「特定防衛施設周辺整備調整交付金」は約5倍の約3億円に拡充した。

 今年3月にはキャンプ瑞慶覧(ずけらん)の南側の西普天間住宅地区の返還が実現した。今後は琉球大学医学部・同附属病院を核とする国際医療拠点形成への期待が高まる。

 宜野湾市軍用地等地主会の又吉信一会長は、「軍用地返還後の補償の法整備で市長が政府と交渉し物事を優位に進めてくれた。政府との太いパイプがある佐喜真市長が再選されなければ計画通りにいかない」と支持を表明した。

 佐喜真氏の対抗馬はまだ決まっていない。4年前に苦杯をなめた野党陣営は候補者擁立が難航。翁長県政を支える革新系政党、労組などから成る選考委員会は辺野古移設に反対する体制で取り組むことを決めた。

 翁長雄志知事は7月上旬、県議会与党の代表者らと知事公舎で会議した。翁長知事は「宜野湾市長選は絶対に勝たないといけない。遅くとも8月までには決めてほしい」と要望したという。これまで桃原(とうばる)正賢(せいけん)元市長の次男で小学校校長の桃原修氏、伊波洋一前市長、伊波前市長の後継者と目されてきた県議の新垣(あらかき)清涼氏(県民ネット)らの名前が取りざたされている。

 また、革新陣営としては中道勢力も取り込まなければ勝算がないとの危惧から地域政党そうぞうの呉屋宏県議に期待する意見も上がる。呉屋氏は自身の後援会の会合で出馬するかどうか尋ねられたが、明確な回答を避けたという。