那覇市、「龍柱」の建設計画を中断

安全性に疑問、予算も不透明

 那覇市若狭地区で進められているシンボルづくり事業「龍柱」建設が昨年度で中断に追い込まれた。城間幹子同市長は1億円の補正予算を計上して工事を再開させたい意向だが、沖縄県民や那覇市民の反発は根強い。中止する場合は一括交付金の返還が求められる可能性が高く、城間市長、さらに、市長時代に龍柱建設を推進した翁長雄志(おあながたけし)知事への責任問題に発展しそうだ。(那覇支局・豊田 剛)

構造上問題、ひび割れも

請負額、入札額を大幅超

那覇市、「龍柱」の建設計画を中断

小さな亀裂と、すきまが生じている龍柱(石材を2段積み上げた状態)=15日、那覇市の若狭海浜公園

 若狭地区の旅客船バース近くの公園に現在、2本の龍柱はわずか高さ2㍍ほどしか出来上がっていないまま放置されている。積み上げられる予定だった龍柱の石材がブルーシートに覆われたままヤードに置き去りにされている。3月には完成するはずだったが、年度末をもって事業が中断したからだ。

 那覇・福州友好都市交流シンボルづくり事業で建設予定の龍柱は、高さ15㍍、幅約3㍍、重量400㌧の柱2本で総事業費は2億6700万円。これを那覇市議会が承認。そのうち、8割に当たる2億1300万円は、国からの一括交付金で賄った。

 龍柱は当初予定の平成25年度に完成せず次年度に繰り越し。ところが、26年度にも完成しなかった。工事が延長された理由として市当局は設計変更や人員不足を挙げているが、理由を明示していない。

 さらに、近隣のほとんどの住民が、龍が中国皇帝のシンボルと言われていることを知らないだけでなく、何ができるかも知らないに違いない。工事現場には昨年度末まで「シンボルづくり事業」という看板が立てられていたが、龍柱とは書かれておらず、完成予想図もなかった。現在はすべて撤去されている。

 たとえ予算が承認されて龍柱が完成したとしても、その安全性に大きな疑問が浮上した。基礎工事として当初、55㍍の杭を打ち込む予定だったが、予想よりも岩盤が固く、25㍍しか届いていない。

 さらに、上層部に龍の頭が積まれるため、構造上バランスが悪く、台風や地震にどれだけ耐えられるかも疑問視されている。1768年5月の沖縄本島近海を震源地とする大地震で、首里城の正殿正面階段の1段目に設置された高さ3㍍の龍柱が倒れたことも明らかになっている。

 また、2段積み上げられている石材の1段目に小さな亀裂とすきまが生じ、その規模は日々拡大している。これが石積みがわずか2段で中断した理由の一つとも考えられる。議会筋によると、工事を再開するにしても、今年度から工事を引き受ける業者が見つかっていないという。

 予算面でも不透明な部分が多い。

 龍柱の設計業務を請け負った有限会社構研テクノスが平成25年4月19日に落札した額は1100万円で、他の競合会社の入札額より約200万円下回った。ところが、契約日と同日付の請負額が約1400万円に増額している。

 また、平成26年1月9日、同社が石材の彫刻作業などにかかる施工管理業務委託で随意契約を交わした金額が約1300万円だったが、請負額では約400万円も上乗せされている。これらは市民団体が情報公開請求で取り寄せた資料で明らかになった。

那覇市、「龍柱」の建設計画を中断

那覇市の花とみどり課が管理する龍柱設置割付図

 作業を継続するとなると、約1億円の追加予算が必要だと見積もられており、27日にも臨時議会を招集して予算案を審議する予定だ。城間市長は記者団を前に龍柱を完成させたい意向を示した。

 龍柱建設に反対する自民党会派の議員4人は、市長に面会を要請したが拒否され、代わりに久高将光副市長が対応した。議員団は龍柱にかける予算を福祉に充てるよう要請。市民の意見を集約するため、6月議会定例会までは予算案を提出しないよう求めた。

 住みよい那覇市をつくる会(金城テル会長)は16日、こうした財政および安全上の疑問について問いただすため市長宛てに公開質問状を提出。また、別の市民団体は同日、龍柱建設に関する報告会を開催するよう求める請願書を市議会に提出した。

 市当局によると、工事を完成させるには約1億円の追加予算が必要だが、事業を中止すれば撤去費用が必要だけでなく、国から一括交付金の返還要求は避けられない。また、龍柱が完成するまで毎月、185万円程度の管理料が発生するという。

 那覇市在住の50代の男性は「行くも戻るもいばらの道。中止するのは一時の恥だが、龍柱を完成させてしまえば永代にわたって恥を残してしまうことになる」と述べ、建設中止の英断をするよう市長に訴え続ける考えを示した。