「琉球処分」違法論を警戒

「日本沖縄史教育研究会」設立準備県民集会 那覇で開催

 沖縄県における明治維新に当たる1879年の「琉球処分」が国際法からみて「違法」だとする論調を県内主要紙が展開している中で、これに危機感を感じた県内外の有識者らで構成される「日本沖縄史教育研究会」の設立準備県民集会が9日、那覇市内で開催された。同研究会は、教科書に書かれた沖縄の歴史内容を歴史資料に基づいて再検証し、「沖縄は古来一貫して日本だった」ことを発信していく考えで、沖縄では基地問題に加え「歴史認識」が大きな問題になりそうだ。(那覇支局・豊田 剛)

「自己決定権」主張に繋がる

「沖縄は古来日本」を発信 政府に正しい歴史認識求める

「日本沖縄史教育研究会」設立準備県民集会 那覇で開催

「日本沖縄史教育研究会」設立準備県民集会の最後で参加者とともに「ふるさと」を合唱する設立準備委員会のメンバーたち=9日、那覇市のパレット市民劇場

 地元紙の「琉球新報」は2009年から10年まで「『琉球処分』を問う」と題する連載を掲載したのに続いて、昨年から今年にかけて「道標を求めて、琉米条約160年 主権を問う」を連載、2月15日に100回で終了した。同日、その総決算ともいうべきフォーラム「道標(しるべ)を求めて―沖縄の自己決定権を問う」(主催・琉球新報、沖縄国際大学)が沖縄国際大学で開催され、翁長雄志知事の有力支持者や「琉球独立派」、一般県民ら約500人が参加した。

  同フォーラムでは、姜尚中聖学院大学長が基調講演したほか、上村英明恵泉女学園大教授や波平恒男琉球大教授、島袋純琉球大教授らが登壇、学者らは琉球国が日本に組み込まれたことは国際法からみて違法で、沖縄の「自己決定権」を主張すべきだという意見で一致した。

 こうしたマスコミ報道や一部学者の歴史解釈に疑念を抱く政治家、教育関係者、財界人らが中心に現在、本土と沖縄で「日本沖縄史教育研究会」の設立に向けて準備が進んでいる。こうした中、3月2日の東京に続いて、9日に沖縄で設立準備県民集会が開かれた。

 同研究会設立準備委員会によると、「沖縄県は原始より現代まで一貫して日本民族にして日本文化を担う日本人」であることを再確認し周知させることが、研究会の設立趣旨。①日本民族としてのアイデンティティーを堅持し、統一した国民意識を形成する②沖縄県のあゆみ「沖縄正史」を日本国民および世界の人々に啓蒙(けいもう)・普及させる――ことを活動目的としている。

 同集会では本土で沖縄問題を研究している「沖縄対策本部」の仲村覚代表が講演。「沖縄県民は民族的にも、言語的にも、DNA的にも日本民族であり、沖縄県民が郷土文化を愛することは日本人としての誇りを持つことだ」と強調した。

 仲村氏は、地元紙や学者による琉球処分の違法論について「中国共産党による沖縄分断工作、プロパガンダ」であるとし、①日本が沖縄を占拠したと世界に周知させる②琉球の帰属問題を国際的な機関で提訴へ持ち込む③琉球国復活の勢力を育成する――という中国共産党の「琉球処分」違法論による対日工作3段階を説明した。

「日本沖縄史教育研究会」設立準備県民集会 那覇で開催

 日本政府が今月6日の閣議で、琉球国がかつて独立国だったかどうかという照屋寛徳衆院議員(沖縄2区)の質問主意書に、「当時の状況が必ずしも明らかでなく、確定的なことを述べるのは困難」とする答弁書を決定したことに対し、仲村氏は、日本政府が正しい歴史認識と正しい公式見解を持つべきだと訴えた。

 また、平成18年、鈴木宗男衆院議員の質問主意書に対し、政府が「沖縄については、いつから日本国の一部であるかということにつき確定的なことを述べるのは困難である」と答弁したことに対しても「中国を利する材料になりかねない」と仲村氏は懸念する。

 引き続き登壇した歴史学者の玉城有一朗氏は、754年に奈良朝廷が大宰府に沖縄島の道標を再建することを指示し、使者を派遣した事実などを例に、明治維新前からずっと沖縄は日本だったと説明。文部科学省検定教科書に準拠した新しい沖縄歴史副読本を制作すべきだと主張した。

 集会の最後では決議文で以下の三つの事項が確認された。

 ①現在、沖縄で進められている反日、親中、琉球独立の言論活動、政治活動の根底には、かつて沖縄は日本より明国や清国との結びつきが深かったとする華夷秩序の沖縄史観があり、その裏には沖縄を日本から分断しようとする中国共産党の意図があること。

 ②現在の日本の教科書は、沖縄県民のルーツを明確に記述しておらず、外国として扱っている時代もあり、琉球独立工作を呼び込む要素となっている。日本政府も沖縄がいつから日本なのか明言できない。

 ③日本史の中の沖縄史を取り戻さなければならない。しかし現在、その役割を担う学術団体が日本には存在しない。

 決議文が全会一致で採択された後、参加者は全員で唱歌「ふるさと」を歌って閉会した。

 同研究会準備委員会は今後、4月12日に同会の発起人集会を開いた後、沖縄が本土復帰した5月15日にあわせて研究会設立記者会見および設立記念講演会を開催する予定だという。