翁長雄志知事、初沖縄県議会は混乱

12月定例議会一般質問で

辺野古埋め立て承認取消の公約、自民の追及に曖昧な態度

 14日に投開票された衆院選で、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の辺野古(名護市)移設に反対する野党候補が移設容認の自民党候補を破って全4区で当選した。知事選の勢いがそのまま影響した形となり、翁長雄志(おながたけし)知事は、辺野古移設断念に向けて自信を見せる。しかし、翁長知事は12月の定例県議会では、移設に伴う名護市辺野古の埋め立て取り消し・撤回について、県政野党の自民党の厳しい追及に対して曖昧な態度を続け、議会が一時空転した。(那覇支局・豊田 剛)

在沖米軍トップと会談、安保・自衛隊で歩調合わぬ与党

翁長雄志知事、初沖縄県議会は混乱

ジョン・ウィスラー四軍調整官(中将)と会談する翁長雄志知事(左)=18日、北中城村の海兵隊太平洋基地本部(米海兵隊提供)

 先の衆院選は、本土では自民党圧勝の結果だったが、沖縄県では自民党にとって逆風の中での選挙戦で、自民公認候補が4選挙区で落選した。自民党候補の合計得票数は革新系候補の合計より約6万票少ない約23万票だったが、自民党に対する県民、国民の投票率が高く、4候補者全員が比例代表で復活した。国民の多くは、自民党の政策を支持したと言える。2年前はほぼ同じ候補者の顔触れで自民党候補が勝利していた。

 「今回は、反基地の風にやられた。保革どちらの陣営にも一定の基礎票はある。決め手となるのは無党派層の動向だ。政治は生き物であり、時の流れで左右する。決して悲観するような結果ではない」

 自民党県連幹部は、知事選の流れや地元マスコミが作り出した「空気」に無党派層がなびいたことが敗因と分析した。

 注目の沖縄4区でも、総務副大臣を務めた西銘恒三郎(にしめこうさぶろう)氏が実力も知名度も申し分なく、勝ち上がるだろうと予想されたが、西銘氏の後援会長を務めたこともある元県議会議長で、辺野古反対を訴えた仲里利信氏に敗れた。

 西銘氏は「非常に厳しい逆風の中での戦いだった。車から『バカヤロー』とののしられたこともあった」と振り返った。

 衆院選の熱狂が覚めやらない中、県議会12月定例会の代表質問が16日に開かれた。初の答弁に立った翁長知事は「辺野古の新基地を造らせないことを私の県政運営の柱にしていく」と宣言。知事選に続いて衆院選で辺野古移設反対を掲げた候補者が全員当選したことに自信を示し、政府との対決姿勢をいっそう強めた。

 ところが、翌日の一般質問では自公の各議員の厳しい追及に遭い、防戦一方だった。知事の公約の履行可能性、公約との整合性を問う質問が相次ぎ、答弁に困窮する場面が多かった。

 その日トップバッターを務めた野党・自民党の島袋大議員は、承認撤回のためには環境アセスメントの見直しなど極めて困難な手続きが必要なことを踏まえ、「辺野古埋め立てをあらゆる方法で阻止する」と知事が明言したことについて、「知事が承認取り消ししなければ2015年6月にも辺野古沖の埋立工事が始まる。今すぐ承認撤回すべきではないか」と挑発的に詰め寄った。

 すると、翁長知事は「(阻止が奏功し)着工しなかったらあなたは責任取れますか」と強い口調で逆質問した。これに対して、自民党会派は「議員に対して礼を失する」として退場、議場は騒然として、議会が一時空転した。知事が議員に対する謝罪と発言取り消しを行うことで、事態は一応収拾した。

 翁長知事は議会で「埋め立て承認の過程に法律的な瑕疵(かし)がないか、専門家の意見を踏まえ検証する」と表明したが、法的不備を知事が国に訴え、承認取り消しを求めるとすれば、司法の判断にゆだねることになるのが当然で、それまでは、国は法律に基づいて辺野古移設を粛々と進めることになる。

 県議会では、自公と一部無所属を除いて共産、社民、沖縄社会大衆党などが過半数の与党会派として翁長知事を支持するが、辺野古反対という一点だけでは連携しているものの、その他の政策では決して一枚岩ではない。翁長知事は沖縄市東部の泡瀬埋め立て事業を容認しているほか、日米安保や自衛隊の重要性を認識している。

 しかし、共産党は泡瀬埋め立てに反対、日米安保破棄を党是としている。那覇空港の第二滑走路建設についても、共産や社民は自衛隊の空港使用などを理由に反対だ。

 翁長知事は18日、沖縄防衛局に続き、北中城村(きたなかぐすくそん)の海兵隊太平洋基地本部を訪れ、在沖米軍トップのジョン・ウィスラー中将と会談した。知事が辺野古移設反対の民意を伝えたとされているが、米軍の報道によると「沖縄県と沖縄駐留の米軍との関係強化について話し合った」という。

 翁長知事は、選挙公約では「あらゆる方法で辺野古移設を阻止する」としたが、「早くも決意が揺らいでいる」とみて、自民党県連は攻撃の手を強めていく方針だ。