那覇市当局のずさんな施設管理が浮き彫り

那覇市が5月公表の「包括外部監査」結果報告書

 那覇市は、昨年度の包括外部監査で公の施設の管理運営および指定管理者制度における財政管理ですべてが不適切と評価されている。市が公開している資料を入手して明らかになった。外部監査制度は、中核市になると法定で義務付けられるものだが、あまりにもずさんな市当局の指定管理の在り方に批判が噴出している。(那覇支局・豊田 剛)

有効活用されぬ施設/不適切な管理コスト

収支同額の障がい者福祉センター、身協の財政管理に疑念

那覇市当局のずさんな施設管理が浮き彫り

週末にもかかわらず人の出入りが少ない那覇市ぶんかテンブス館。ここは「有効活用されていない」と指摘されている

 那覇市は2013年4月1日から中核市に移行した。中核市になると、「包括外部監査」が法定で義務付けられる。今年5月には那覇市としては初めての包括外部監査結果が公表された。

 那覇市は平成24年4月に策定した「中核市移行行動計画書」で、「今後も厳しい財政運営が続くことが予想される」とし、「限りある資源をいかに有効活用し、時代に即した質の高いサービスを提供」するかと明記している。

 ところが、監査結果報告書は財政の不透明さばかりが目立つものだった。

 300ページを超える報告書の着眼点は、①施設は設置目的どおり有効利用されているか②設置管理条例に基づいて適切に運営されているか③施設の運営コストは適切な水準か④施設の維持管理は適切に行われているか――などだ。

 指定管理制度対象施設は子育て、教育、福祉、公園管理、住宅など多岐にわたる。67の施設のうち、監査時点に民営化された一つの施設を除いてすべての施設に対し「有効活用されていない」と指摘。さらには64施設について「施設管理コストは適切でない」と判断した。

 指定管理者については、2施設を除くすべてが「指定管理料が適切でない」「指定管理に係る出納その他の実務(実績報告書作成を含む)は適切でない」という結果が出た。

 報告書の中には、一般社団法人那覇市身体障害者福祉協会(以下、身協)が指定管理者を務める市障がい者福祉センターも含まれている。同センターにおける障害福祉サービス事業については、那覇市の翁長雄志市長および関係当局が不正支出を理由に住民から提訴されている。

 同報告書によると、身協の運営は障がい者福祉センターの運営に過度に依存しているため、「指定管理者から外れた場合は職員の雇用を続けることは不可能」とした上で、身協の事務所がセンターの建物内にあることを指摘、「障がい者センターは、市が所有している建物であるが、身体障害者福祉協会は、事務所部分の賃料を支払っておらず、無償で使っているものと思われる」、市と身協との間で「当該建物を無償で貸借する契約を提携しているわけではない」と、事務所部分の賃料を払っていないことに強い疑念を示した。

 事業内容についても、障害福祉サービス事業は条例上、実施することとなっているにもかかわらず「事業が全く行われていなかったのは問題である」と指摘した。

 決算状況についてはさらに厳しい見方だ。

 平成24年度決算書の中で、支出が4154万円に対して指定管理料収入4154万円と同額であることについて「収入と支出が完全に一致していることはおおよそ考えられず、金額を調整して、あえて同額になるように収入と支出の金額を合わせていると思われる」「このような決算書では、実態に即した収益の把握ができず、指定管理者による運営状況を把握しているといえないため、問題である」と糾弾とも思える指摘だ。

 これについて県内の税理士は、「収入と支出が完全に一致するということは考えられない。先に収入があって、無理やり支出を合わせていると思われる」と身協の管理運営上の「悪意」の可能性を指摘した。

 一連の結果報告について、那覇市の前泊美紀議員(無所属)は6月定例議会で「指摘があった事項について、市が原因を究明し、また、意見に示された改善案を参考にして措置を講じ行政に生かしていかなければ、全く意味がない」と発言、議会で問題提起した。これについて本紙が問い合わせたところ、市当局は、「報告結果に基づき各所改善に取り組んでいる」と説明した。

 こうした中、元市議で市長の後援会長でもある高良幸勇氏がこのほど、身協会長を辞任した。ある市議は、「市長と関係当局が住民訴訟を起こされたため、尻尾を巻いて逃げたのであろう」と述べた。


包括外部監査

 「外部監査制度は、地方分権の推進や不適正な公費支出の問題を背景として、平成9年に地方自治法の改正により導入されたもので、監査委員による監査とは別に、地方公共団体がその組織に属さない高度な専門的知識を有する弁護士、公認会計士、実務精通者又は税理士の資格を有する者と外部監査契約を締結し監査を実施することにより、監査機能の独立性、専門性を強化し、地方公共団体の監査機能に対する住民の信頼を高めることを目的に導入された制度です」(那覇市ウェブサイトより抜粋)