「21世紀ビジョン」発展の流れ継続、仲井真弘多知事3選出馬表明
11月16日投開票の沖縄県知事選に向けて、仲井真弘多(ひろかず)知事(74)が7日、那覇市内のホテルで記者会見し、知事選に3選出馬することを正式に発表した。自民党県連の西銘恒三郎会長(衆院議員)ら国会議員、自民党県議はじめ県内41市町村長のうち31市町村長、議長のほか、女性部、青年部、経済界、後援会など約400人が詰めかけた。仲井真知事の発言から出馬の真意を探ってみる。(那覇支局=竹林春夫)
日米安保尊重も基地負担軽減
沖縄の「誇り」を世界に発信
「沖縄は現在、産業、雇用、医療、子育て、離島の振興、あらゆる分野で大変活況を呈しており、成果が表れている。この流れ、うねりをストップさせてはならない。逆回転させてはならない。基地問題についても、改良、改善が着実に進んでいる。この流れを加速し、力を強め、県民生活を一段と向上させる。これが知事の責任であり、仕事である。この大役をもう一期担わせていただきたい。あらゆるエネルギーを投入していく覚悟である」
仲井真知事は、記者会見でこう語り、力強く出馬表明をした。
知事は「2期8年。1期目で約180の政策、2期目で約200の政策を実現するために、県民とともに仕事をしてきた」とし、任期中に作成した20年先を見込んだ「沖縄21世紀ビジョン」に言及。「これを基本にして、実現するために予算を確保し、邁進(まいしん)してきた。おおむね手が着き、前進している」と述べ、一括交付金の創設、3000億円台の沖縄振興予算の確保、那覇空港第2滑走路の着工、完全失業率の改善など任期中の実績を強調した。そして「これから先も、豊かで住みよい沖縄づくり、そしてアジアと世界に向けて羽ばたく沖縄づくりをしっかりとやりたい」と抱負を語った。
基本的課題として知事は、①安心、安全な県民生活ができる郷土づくり②離島、過疎地域で暮らす県民が不公平感をもたず生活できるようにする③子育ての不安を取り除き、女性が安心して暮らせる社会づくり④雇用の量の拡大とともに質の向上⑤子供の貧困、大規模災害の対応――などを挙げ、「県民目線で解決する」とした。
特に沖縄振興の目玉である南北縦貫鉄軌道については、那覇空港第2滑走路の併用が始まる2020年にも着工にこぎつけたい意向を表明した。
基地問題について、知事は「基本は過剰な基地負担を大幅に削減し、本土と沖縄との不公平な状況を解決することが基本的な考え方で、日米安保を尊重しつつも、多くの県民が基地被害にさらされている現実を解決しなければならない」と基本姿勢を強調。その上で、「安保反対とか、基地の即時撤去といった非現実的な主張にくみするわけにはいかない。現実かつ柔軟な姿勢が必要である」と述べ、辺野古移設反対を主張する知事選出馬予定の翁長雄志(おながたけし)那覇市長陣営を牽制(けんせい)した。
米軍普天間飛行場の辺野古沖移設に関する沖合埋め立て承認については、「埋め立ての要件が整えば承認せざるを得ないという法律に基づいた」とし、合法的な行政手続きだったことを強調。「防衛省に対して『事実上不可能に近い』と思えるような厳しい条件を突き付けたが、防衛省がこれをクリアしたので承認をした。『事実上不可能』と言ってきたが、『ノー』と言ってきたわけではない」と経緯を説明した。
承認後の県の立場については「承認後は、国の仕事。国が責任をもって埋め立てし、やるべきことをやる。辺野古に移す政府案は前に動き始めた」との見解を示した。
また、「普天間問題は、普天間飛行場の危険性除去が目的であって、県外移設は手段のひとつ。県外を目的化している政党があるが、これは違う」と言明、「5年以内の運用停止に向けて、訓練や移設が進んでいる。埋め立てして、キャンプ・シュワブ内に代替施設を建設するのであって、新基地を建設するのではない」と革新派の新基地建設の主張を否定した。
さらに、「辺野古に移す政府の案が、危険性除去に向けて、一番早い、現実的な流れ。これに反対して、元に戻すことは混乱を起こすことになる」と辺野古移設反対の非合理性を強調した。
「普天間の解決が基地の解決」とした知事は、安倍晋三首相が県民に約束した四つの項目①普天間飛行場の5年以内の運用停止②地位協定の見直し③キャンプ・キンザの7年以内の返還④新型輸送機オスプレイの分散化――を挙げ、「5年以内に運用停止の実現に向かって進んでいる。キャンプ・キンザなど嘉手納より南の基地を返還してもらい沖縄の経済社会の発展に活用したい」と語った。
最後に、知事は、「結びに、沖縄の“誇り”と“可能性”を世界に発信させていきたい。“誇り”とは、臆せず、ひるまず、時代を生き抜いて文化を創造してきたウチナー(沖縄人)の活力のこと。文化、芸術、産業、医療、あらゆる分野で、「万国津梁(しんりょう)」(世界の懸け橋)の考えで進めていきたいというのが、基本的な夢であり理想だ」とし「『独立独歩』『独立自尊』という基本精神で沖縄の発展に寄与したいという気力が満ちている」と締めくくった。
この後、自民党県連の西銘会長が「2期8年の仲井真知事の実績を評価します。11月の知事選に向けて我ら一致団結して頑張ろう」と知事を激励した。