米軍と地域との信頼を醸成、基地所在自治体が報告
県主催で東アジア安全保障フォーラム
東アジア地域の安全保障をテーマにした県主催のフォーラム「万国津梁(しんりょう)フォーラム」が17日、那覇市のホテルで関係者約330人を集めて開かれた。同フォーラムは昨年に続いて2回目。今回は「地域と共に創造する安全保障観」がテーマで、基地所在自治体から基地を取り巻く課題や取り組みについての報告があったほか、韓国から代表が初参加した。本土の自治体に共通することは基地をいかに活用し地域住民に還元するかという前向きな内容が多かった。「重い基地負担」という報道が飛び交う沖縄とは対照的だった。(那覇支局・豊田 剛)
岩国市、国民全体で国防意識を
自然災害、エネルギーなど総合的安保政策で協力必要
沖縄県が知事公室内に安全保障について研究・対応する地域安全政策課を2012年4月に新設、アジア太平洋地域から専門家を招いて同地域の安全保障について考える「万国津梁フォーラム」が13年11月に第1回が開催された。
主催者を代表して仲井真弘多(ひろかず)知事は「沖縄県は、アジア・太平洋地域が直面する安全保障、危機管理の現場として、多様な課題に関わらざるを得ない。このため、沖縄で同地域の対話と相互理解を促進する場を継続して用意するのがフォーラムの目的」と、同フォーラムの意義を確認した。
今回は、「地域と共に創造する安全保障観」がテーマで、米軍基地を抱える神奈川県、長崎県佐世保市、青森県三沢市、山口県岩国市の関係者が基地との関わり方や課題克服について事例を報告した。
フォーラムが開催される2日前の15日、米軍の空中給油機部隊に所属するKC130のうち2機が普天間飛行場から岩国基地に移駐。8月末までに15機すべての移駐が完了する見通しだ。
岩国市の村田光洋政策審議官は「KC130の移駐を通して沖縄と良好な関係を構築できた」と話した上で、「本来、安全保障は国民全体で担うべきであり、基地負担を抱える自治体は、密接に連携して国に働きかけ、国民に訴える必要がある」と主張した。
また、神奈川県から来た黒川雅夫副知事は、人口密集地に多くの基地を抱える神奈川県の厚木基地が普天間飛行場(宜野湾市)と同様の騒音問題を抱える点を指摘。「日米安全保障体制は大変重要であり、大局的な見地から基地問題を捉えていくことが必要」とした上で、騒音対策や基地の整理・縮小を日米両政府に求めていると説明した。
米海軍基地がある長崎県佐世保市の朝長(ともなが)則男市長は「70年近い米軍基地との関係のなかで、米軍も積極的に地域との交流を図り、信頼関係を築こうとしている」と米軍の地域との信頼醸成の努力を評価。防犯連絡会議や米軍と一緒に祝う祭りの開催などを紹介しながら、「基地があることを逆に良い方向に持っていく努力も必要だ」と訴えた。
空軍の戦闘機部隊が駐留している三沢基地がある三沢市の米田光一郎副市長は、米軍と地元の協力関係や米軍による数多くの地域貢献を紹介した上で、「主婦が幸せに暮らせる街ランキングで北海道・東北ブロックで1位になった」と誇った。
同フォーラムに出席した海兵隊キャンプ・キンザー(牧港補給庫)がある浦添市の松本哲治市長は、「基地が地域の安全保障を担っているという観点から、基地があることをプラスに考えなければならない」と基地と地域との協力関係の重要性を強調した。
続いて、第2部の「総合的安全保障―東アジアの現状と沖縄の役割」をテーマにしたシンポジウムには、東京大学大学院の高原明生教授、北京大学国際関係学院の于鉄軍准教授、ジョージワシントン大学のマイク・モチヅキ教授、台湾から淡江大学米国研究所の陳一新教授、そして、今回初めて韓国からソウル大学国際大学院の朴●(「吉」の右に「吉」)熙教授が加わった。
パネリストたちは、沖縄の地政学的重要性に理解を示しつつ、現代の安全保障の概念が軍事だけではなく、自然災害、感染症、エネルギー問題を含めた分野に拡大した総合的な安全保障の必要性、また国家を超えて地域安全保障に拡大しているという認識で一致した。また、沖縄が持つ歴史・文化などのソフトパワーに期待を寄せた。
同日午前には県内の高校生、大学生らが参加するユースフォーラムが開かれ、「県内に語学センターを設置し、異文化交流・多文化共生を図るべきだ」という意見が出た。高原教授は、「若者の意見を県はどのように取り入れ具体化するのかが問われる」と県のイニシアチブに期待した。
コーディネーターを務めた高良倉吉副知事は、「前回は、狭い意味での軍事、危機管理の安全保障をテーマとしたが、今回は広い意味での総合的な安全保障について各地域との情報を交換できたこと、それに米軍基地を抱える本土の自治体の実情を県民に知ってもらえたことはよかったのではないか」と総括した。







