在沖米軍、韓半島安定に重要
東アジア安保でシンポジウム、那覇市内で開催
歴史認識や慰安婦問題をめぐって日韓関係がこじれる中、「東アジアの安全保障と日米韓協力の意義」をテーマに専門家によるシンポジウム(主催・在沖米国総領事館、パシフィックフォーラムCSIS)が12日、那覇市内で開催された。シンポジウムでは、安全保障に詳しい日本、米国、韓国の専門家が北朝鮮や中国の問題で3カ国が緊密な連携を取ることが重要との認識で一致した。(那覇支局・豊田 剛)
「北の核」には日米韓で瞬時の情報共有が必要
日韓歴史認識問題、政治のリーダーシップで解決を
地理的に東アジアの中心に位置する沖縄。県土に占める米軍基地の割合の高さからも示されるように、アジア太平洋地域の平和と安定のために果たす役割は大きい。ところが、2010年9月に中国漁船が尖閣諸島(石垣市)沖で海上保安庁の巡視船と衝突して以来、中国は領海領空侵犯を繰り返しており、地域は不安定さを増している。
沖縄県民の対中感情は悪化の一途をたどっている。沖縄県の地域安全政策課が今年4月に発表した意識調査によると、9割の県民が中国に対して悪い印象を持っていることが明らかになった。
「中国に対する印象」の項目で「良くない印象を持っている」が38・9%、「どちらかといえば良くない印象を持っている」が50・5%となった。一方で、米国と台湾に好印象を持っている県民は圧倒的多数を占めた。
また、「東アジア海洋で軍事紛争は起こるか」との質問では、「数年以内に起こると思う」が7・1%、「将来的には起こると思う」が43・0%に達した。半数の県民が中国に対して危機感と警戒心を抱いている。
それに加え、2012年8月に韓国の李明博大統領が竹島に上陸し、天皇陛下に謝罪を要求して以来、日本人の対韓感情が悪化。沖縄も例外ではない。
こうした中、今回開催されたシンポジウムでは、日韓両国が課題を乗り越え、政治および安全保障面での連携を強めていけるのか、中国や北朝鮮とどう対峙(たいじ)していくべきかについて話し合われた。
米国を代表して元米国防総省東アジア政策担当でLMIガバメント・コンサルティング上級顧問のジョセフ・ファーガソン氏、韓国からは元国家安全保障会議メンバーでアサン政策研究所副所長の崔剛(チェカン)氏、日本からは慶応大の西野純也准教授がパネリストとして登壇した。元ジャパン・タイムズ論説委員でパシフィックフォーラムCSIS(ハワイ)のエグゼクティブ・ディレクターのブラッド・グロッサーマン氏が進行役を務めた。
ファーガソン氏は、「米国は日韓両国の友好関係を強く求める。両国は似ている部分が多く、文化的・経済的交流によって対立を乗り越えられる」とし、災害・人道支援や航行の自由、核不拡散の分野で持続的に協力することを提案した。北朝鮮の核・ミサイル問題では「日米韓の3カ国で瞬時に情報共有できるようなミサイル防衛の仕組みが必要である」ことを指摘した。
崔剛氏は「北朝鮮はエネルギーや食糧、通貨で中国に過度な依存をしており、日米韓3カ国が北朝鮮問題を解決するためには中国の協力が不可欠」と述べた上で、拉致問題については「日本政府は事前に米韓両国と足並みをそろえて解決を図るべきだった」と苦言を呈した。
慰安婦の強制連行の有無や竹島の領有権をめぐる対立については、政治のリーダーシップで解決すべきだと強調。また、「朴(パク)(槿恵(クネ))大統領はもう少し(外交面で)活動的になった方がいい」と提言、「日韓関係を悲観していない」と締めくくった。
西野純也氏も崔氏と同様に「歴史認識問題は日韓両国の政治的リーダーシップで解決すべきだ」と強調。日韓は実務レベルでは協力関係を結んでいるが、「国民の認識と理解が少ないことが問題だ」と指摘した。
その上で西野氏は「日韓の対話が少ないため、お互いの対中認識が理解されていない。安全保障政策について認識を共有し、協力できる分野で協力することが地域の安全保障にとって重要である」と、安全保障面での協力関係の重要性を強調した。
シンポジウムでは、対北朝鮮問題では、米国は核・ミサイル問題、韓国は南北統一、日本は拉致被害者救出と、最優先事項・関心事に違いがあることが明らかになった一方で、「北朝鮮が脅威であり、日米韓が連携して問題解決を図るべきだ」という認識で3人は一致した。
在沖米軍基地および日米韓関係における沖縄の役割については、崔氏は「米軍基地は韓半島の安定にとって重要」と指摘。西野氏は「沖縄は地域の安全保障とは切り離せない環境にある。近隣諸国との良好な関係なしに、日本外交の成功はない」と締めくくった。