前副市長の島袋氏一歩リード、前県議の桑江氏が猛追 沖縄市長選

県知事選の前哨戦

 任期満了に伴う沖縄市長選は20日告示され、革新系無所属の新人で前副市長の島袋芳敬氏(64)=社民・共産・社大・生活推薦=と、保守系無所属の新人で前県議の桑江朝千夫氏(58)=自民・公明推薦、そうぞう・維新・民主支持=が立候補した。投開票日は27日。11月に想定される県知事選を控えた「前哨戦」と位置付けられ、日米同盟に大きな影響を与えることから、両陣営とも県内外から政党の有力者が多く駆けつけている。(那覇支局・竹林春夫、豊田 剛)

島袋氏、辺野古移設反対勢力結集めざす

桑江氏、革新市政打倒し経済立て直しへ

沖縄第2の都市・沖縄市、知事選前哨戦の市長選

総決起大会で普天間基地の辺野古移設反対を訴える島袋芳敬氏=18日、沖縄市民会館

 沖縄市は那覇市に次いで2番目に人口が多く、沖縄本島中部の中心都市だ。本土復帰前は米軍相手の商売がにぎわい、「ドルの雨が降る」とも言われていた。ところが最近では、市の中心街はその面影すら失われつつある。中心商店街は「シャッター通り」と言われ、文字通り、ほとんどシャッターが下りている。同市の失業率は14・5%で、県平均を10ポイントほど上回る。平均所得も県平均を下回る。東門美津子市長による8年間の革新市政が経済の停滞を招き、市民の中に閉塞(へいそく)感が漂っている。このためか、市内の至る所に「革新不況」と書かれた張り紙を見かける。

 東門市長の後継者に指名されたのは、副市長の島袋氏。助役、副市長として現市政を8年間支えた。島袋氏を社民、共産、社大、生活の4党が推薦。県議会会派の中道左派・県民ネットも支援している。

 従来の「革新共闘」の枠組みを超えた「オール沖縄」を掲げ、県知事選を見据えた5団体は、「オール沖縄市」を合言葉に、沖縄市民と直接関係のない、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する勢力の結束を目指し、「政府、自民対沖縄市民の戦い」と選挙戦を位置付ける。

 18日に沖縄市民会館で行われた島袋氏の総決起大会では、革新系国会議員らが登壇、安倍政権や仲井真県政を相次いで批判、市民の関心である沖縄市の街づくりや将来像に乏しい内容となった。社大党委員長の糸数慶子参院議員は「安倍政権は一歩一歩、戦争の勢力へ向かっている」と語り、有権者を反政府に誘導する発言をした。経済界を代表して登壇した「かりゆしグループ」CEO(最高経営責任者)の平良朝敬氏は、「辺野古移設ノーを争点にしていくことが大事」だと訴えた。

 島袋氏も出陣式の第一声で、「基地問題は沖縄市が決めないといけない。辺野古移設は絶対に認められない」と述べるとともに、「政府の言いなりにならない沖縄市、市民主権の街をつくろう」と語り、東門市政の継承を訴え、基地や街づくり政策で桑江氏との違いを見せた。

沖縄第2の都市・沖縄市、知事選前哨戦の市長選

総決起大会で沖縄市復活ビジョンを語る桑江朝千夫氏=17日、沖縄市民会館

 一方、桑江氏は、桑江朝幸元市長の次男。8年前に続き2度目の挑戦となる。「8年前は市長になりたいと思ったが、今の沖縄市の現状を見ると『ならなければならない』と思った」と、革新市政による無策の経済低迷に対して県議の職を辞しての出馬を決意した。

 「いよいよ今日から、沖縄市復活のための挑戦が始まる。そのために私はビジョンをつくった」

 桑江氏は告示日にこう語り、①潜在能力を持った沖縄市を観光客でいっぱいにする②動物公園「こどもの国」を旭山動物園(北海道旭川市)のようにユニークな動物園にする③有名アーティストのライブができる全天候型アリーナを建設する④サーキット場建設など「日本一幸せな街づくり」に意欲を示した。そして「将来の市のために、皆で沖縄市を復活させよう」と、「沖縄市復活」を訴えた。

 桑江陣営は、自民と公明の推薦、それに維新、中道のそうぞうと民主から支持を受け、市政奪還を目指す。そうぞうと民主はこれまで自公路線とは一線を画していた。今回の沖縄市長選で方向転換したもようで、県知事選挙に向けて保守陣営に一歩踏み込んだ連携を見せている。

 公明は、金城勉県議が選対本部事務総長に就任したほか、告示日には、斎藤鉄夫党幹事長代行(衆院議員)、太田昭宏国交相が応援演説した。1月の名護市長選では公明は自主投票となったが、沖縄市長選では「自民党以上に動いている」(自民党県連幹部)。

 自民党本部は、今年1月の名護市長選、3月の石垣市長選に続いて「国政選挙並み」(県連幹部)の支援を約束。これまでに、小渕優子衆院議員、小池百合子衆院議員が応援に入ったほか、告示日には、舛添要一東京都知事に加え、石破茂幹事長も激励と応援に駆けつけた。23日には小泉進次郎衆院議員が応援演説する。

 仲井真弘多(ひろかず)知事も沖縄市長選勝利に向けて必死だ。「桑江さんは実績豊富で夢を持ち行動力もある。市民と一緒に夢を描ける人が市長になるべきだ」と応援、沖縄市長選に勝利して秋の知事選に向けて保守3選に尽力する構えだ。

 17日夜に沖縄市民会館で行われた総決起大会には、ロビーにも入り切れないほどの有権者約4500人(主催者発表)が参加した。地元の60代の男性は、「選挙の大会でこれだけの人が集まったのはこれまで見たことがない」と、東門革新市政への不満と保守政権奪還への市民の期待の表れだと分析した。

 自民党本部、自民党沖縄県連ともに、秋の知事選で辺野古移設容認派を当選させ日米同盟を深化させるためにも沖縄市長選を「絶対に負けられない決戦」と位置付けている。

 「序盤戦は差を大きく開けられていたが、ここにきて陣営が結束し、相手の背中が見えてきた。今、勢いがある。この1週間が勝負だ」

 桑江陣営は、最後の「3日戦争」で形勢不利を逆転できると目論む。

 沖縄市の選挙人名簿登録者は、19日現在、10万3178人(男性4万8976人、女性5万4202人)。