保守で前進か、革新に戻るか 石垣市長選、来月2日投開票
任期満了に伴い3月2日に投開票される石垣市長選は23日告示され、2期目を目指す現職の中山義隆氏(46)=無所属、自民・公明推薦=と返り咲きを狙う前職の大浜長照氏(66)=無所属=が立候補を届け出た。2012年9月の尖閣諸島国有化後、初めてとなる同市長選。中山氏は尖閣諸島を含む南西諸島防衛に意欲を示しているが、大浜氏は「防衛強化で緊張が高まる」と話し合いによる解決を公約に掲げている。(那覇支局・豊田 剛)
中山氏、南西諸島防衛に意欲
大浜氏、「自衛隊配備許さず」
21日、石垣市民会館で中山氏の総決起大会が開かれ、約2500人が集まった。
自民党と公明党の代表のあいさつが終わると、安倍晋三首相のビデオメッセージが流れた。「中山市長は石垣市、沖縄県、日本にとって大切な人材。半年前に石垣島を訪れ、新国際空港をはじめ島内を回ったが、東アジアの玄関口としての大きな可能性を感じた」と有権者に語りかけた。首相が一地方の首長選にビデオメッセージを送るのは異例のことだ。
自民党本部からは三原じゅん子女性局長が応援に駆けつけ、「4年前を思い出してください。4期16年間、市民は大きな閉塞(へいそく)感に悩まされたが、それを(中山氏は)若さと行動力で打ち破った。最大の争点は『前へ進むのか、それとも過去に戻るのか』」と負けてはならない選挙を強調した。
総決起大会には、三原じゅん子氏の他、仲井真弘多(ひろかず)知事、県選出の西銘恒三郎衆院議員、宮崎政久衆院議員、島尻安伊子参院議員が登壇。先島諸島地域からは宮古島市の下地敏彦市長および市議団が駆けつけた。また、首長を代表して佐喜真淳宜野湾市長、松本哲治浦添市長が応援演説した。登壇者はいずれも、民主党政権で弱体化したデフレ脱却を目指す安倍政権に理解を示すとともに、「普天間飛行場の危険性の早期除去のためには県内移転はやむを得ない」という見解で、行政手続きに基づいて公有水面埋立申請許可を出した仲井真弘多知事支持を表明している。
中山候補は「経済を前に進めるためには勝ち抜かなければならない。日本一幸せあふれる石垣市の第2章をスタートさせたい」「アジアに開かれた国際都市を目指す」と、4年間の実績を踏まえて、今後市内のインフラ整備によるさらなる経済復興を訴えた。
これより先、石破茂幹事長は21日の党本部での役員連絡会で「事の重要性に鑑み、党を挙げて当たっていきたい」と、自民党が石垣市長選で中山候補を全面的に応援する方針を示した。選挙期間中は、石破氏のほか、小泉進次郎内閣府政務官が応援に入ることが決まっている。公明党も「全面的協力」(公明市議)で中山候補を応援する構えだ。
自民党本部としては、普天間飛行場の名護市辺野古への受け入れが争点となった1月の名護市長選で苦杯をなめており、尖閣諸島沖で領海侵犯を繰り返す中国の圧力に対応するためにも、石垣市長選の勝利で弾みをつけ、普天間飛行場の移設を着実に進めたい意向だ。
一方、大浜選対本部は「全県から集まった支持者がローラー作戦を展開したおかげで、支持の広がりを実感している」と共産党はじめ外部動員の応援に自信を示す。名護市長選で革新系の稲嶺進市長が共産党員ら全国動員で再選されたことも追い風となっているようで、名護市から電話で票集めする活動も展開している。
大浜陣営は「今回の選挙で初めて『市民党』という言葉を使う」と革新色の払拭(ふっしょく)に努めているが、実態は、自治労、退職教員、共産党、社民党、沖縄社会大衆党(社大党)が母体の革新共闘体制だ。
大浜候補は、22日夜に市内で行われた支援者集会で、「市民党」を豪語しながらも、演説の大半を反戦・反自衛隊の話題に割いて「反戦平和」の革新の本音を漏らした。
冒頭、沖縄本島北部のへき地診療所の所長を辞してまでも再出馬した理由として、「今、石垣島が心配でならない。この4年間で私は生まれ変わった」と「ニュー大浜」をアピール。
その上で、「戦争ができる国をつくろうとする安倍政権の言いなり」「自衛隊の配備を許してはならない」と、現職の中山候補攻撃に終始。「自衛隊が配備されれば米軍との共同使用となり、オスプレイが石垣の空を飛ぶようになる。基地がないから平和で豊かな石垣市になった」と持論を展開した。告示日の翌日には、社大党党首の糸数慶子参院議員、革新系無所属の山本太郎参院議員が応援演説している。
こうした大浜陣営の中山候補攻撃に対して、外間守吉与那国町長は、「与那国島に自衛隊が配備されるまで計画から20年ぐらいかかる。4年前、相手候補(大浜氏)は『中山氏が市長になれば、戦車が道路を走り、軍靴の音が聞こえる』と言っていたがそうなりましたか」と、中山陣営の出陣式で自衛隊配備が争点にならないことを指摘した。
両陣営ともに、23日の出陣式で尖閣諸島の領有権問題には直接触れなかった。市内で土産店を営む50代の女性は、「軍拡を進める中国の脅威を石垣市民は身にしみて感じている。有権者は賢い選択をしてほしい」と話した。尖閣諸島の領有を狙う中国の脅威に対して市民は市長選でどう判断するのか。
23日には市議の補欠選挙も告示され、欠員1人に対し、中山陣営1人、大浜陣営1人の2人が届け出て、市長選と同様、保革一騎打ちの戦いになる。22日現在の選挙人名簿登録者数は3万7259人(男性1万8513人、女性1万8746人)。