OISTが研究、シークヮーサーの起源解明へ


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 沖縄を代表する柑橘(かんきつ)類にシークヮーサーがある。実が小さく、苦みと酸味が強いのが特徴。すっきりした味わいで、暑い夏にはもってこいの果物だ。
 果たしてシークヮーサーはいつどのように沖縄に伝来したのか。沖縄科学技術大学院大学(OIST)はそんな疑問に答えるべく研究を進め、このほど英科学誌「Nature Communications」に研究成果が掲載された。

 シークヮーサーなど東アジアの柑橘類の起源は、これまで詳しいことは明らかになっていなかった。そこでOISTなどによる研究チームは、東アジア69種類のミカン科品種やアジア大陸の品種の遺伝情報を解析した。

 その結果、シークヮーサーは「非常に特殊な琉球の品種とアジア大陸の品種の交配種である」ことを発見。「数万年前にアジア大陸のマンダリン類(柑橘類の上位分類)が当時陸続きだった琉球列島へと運ばれた末、琉球在来の柑橘類と交配してできた可能性が高い」と結論付けた。

 中国南部の湖南省蒙山が野生マンダリン類の遺伝子の起源で、その亜種の一つが、受粉などを伴わない無性生殖で子孫を増やした。沖縄のシークヮーサーも同様に無性生殖の能力を獲得したため、結果として「同じ品質の農産物を安定して作ることができる」メリットが生じ、商業的に寄与することになったという。

 OISTの分子遺伝学ユニットを率いるダニエル・ロクサー教授は、「起源を遡(さかのぼ)ることで、他にどのような交配種があるのか、病気や旱魃(かんばつ)に強い品種やその他の望ましい特性を持つ品種を新たに作れるかなど、未来に向けてさまざまな可能性を生み出すことができる」とコメントした。今後、どのような改良品種が開発されるか、期待が膨らむ。(T)