神奈川県知事の「表現の不自由展」認めぬ発言を地方面で扱った「朝日」
◆「表現の自由」を逸脱
たまたまNHKラジオを聞いていたら、次のような主旨のニュースが流れた。
8月1日から愛知県で開かれている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の中の企画展「表現の不自由展・その後」について、神奈川県の黒岩祐治知事が27日の定例記者会見で、「展示は政治的なメッセージで表現の自由を逸脱しており、仮に県内で同じことがあれば絶対に開催は認めない」と発言したというのだ。
この企画展は、昭和天皇の写真をバーナーで燃やし、その灰を踏み付けるところを映した動画や元慰安婦を象徴した「平和の少女像」など「反日」思想を思わせる作品ばかりが展示されたことで、テロ予告を含め抗議が殺到し、結局開催3日で中止となった。
もちろんテロ予告は犯罪であり、絶対に許してはならないが、展示作品は「芸術」の名を借りたプロパガンダであり、日本人に対する「ヘイト」を感じる人もいるはず。それを、公費が投入された芸術祭で展示するというのだから、「表現の自由」以前の「良識」の問題だ。しかし、公的立場にある人間が展示作品に疑問を呈すると、「表現の自由の侵害だ」と、左派のマスコミから批判を受けるという現実がある。
例えば、芸術祭の実行委員会会長代行の河村たかし・名古屋市長は「日本国民の心を踏みにじる行為」であり、それを税金を投入して開くことに抗議の声を上げたが、朝日新聞(8月4日付)は「展示内容によって補助金が『精査』されることになれば、憲法が保障する『表現の自由』を制限することにもつながりかねない」と批判した。
一方、芸術祭実行委会長の大村秀章・愛知県知事は「表現の自由を保障した憲法21条に違反する疑いが極めて濃厚」と、憲法を持ち出して「金は出すが、口は出さない」と、責任逃れともとれる弁明を行っていた。
◆批判を恐れずに明言
そんな中で、かつてフジテレビのキャスターを務め、日本のメディア事情に詳しい黒岩知事が「開催を認めない」と、批判を恐れずに明言したことは真にあっぱれである。そう思い、この知事発言を新聞がどう報道しているのか、と記事を探したが、手元にあった全国紙を見てもどこにも載っていない。
社説に当たる「主張」(7日付)で、「芸術祭の津田大介芸術監督は表現の自由を論議する場としたかったと語ったが、世間を騒がせ、対立をあおる『炎上商法』のようにしかみえない」と、企画展を批判していた産経にさえ記事はなかった。
後で調べて分かったことだが、全国紙は神奈川版で掲載していたのだ。例えば、朝日は28日付に「『自分なら開催認めない』――表現の不自由展めぐり知事」と、2段見出しを立て、「黒岩知事は会見で『私もメディアにいた人間として表現の自由は大事と思う』としつつ、慰安婦像は『政治的メッセージ』であり、『公金を使って後押しすることは県民のご理解を得られない』と語った」と、簡潔に報じていた。
◆偏向した報道の典型
ここで強調したいのは、黒岩知事の勇気ある発言は、一部地域の人しか読めない地域版ではなく、全国の人が読める面に掲載すべきだったということ。もう一つは、朝日の場合だが、企画展の中止が決まった翌日(4日付)の報道との差である。
中止の一報記事を1面トップで扱い、その関連記事を2面全面と社会面に、大々的に展開するという熱の入れようだった。もちろん、その論調は「許されない脅迫、考える場奪った」「『公金投入』理由に政治家が批判」「政治家の中止要求、検閲的行為」などの見出しを躍らせ、企画展の中止決定に異を唱えるものだった。
これも、自分たちの思想に反するものは、無視するか、小さく扱う偏向報道の典型である。もし、企画展に異を唱えた河村市長を批判し、大村知事や津田氏の姿勢を支持する発言を行う知事が出れば地方版ではなく、全国の読者が読める面に大きく掲載するはずだ。
(森田清策)





